クレジット市場、ショートポジションが増加-行き過ぎた楽観に警鐘も
(ブルームバーグ): 運用する資金があるのに新規の投資案件が少ない資産運用会社がこぞって購入したことで、社債の信用スプレッドが過去最低に近づいた。一部投資家はこれを、値下がりリスクへのヘッジを購入する好機とみている。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスがまとめたデータによると、機関投資家による社債のロングポジションが10.6%増の4兆6000億ドル(約709兆円)となったのに対し、ショートポジションは25%増え3360億ドルに達した。証券借り入れに基づくデータによると、価格下落を見込むポジションはロングポジションの7.3%相当に達し、1年前の6.4%から増加している。
クレジット市場の楽観度を示す指数は2021年以来の高水準に達し、ディストレスト債の量は今年最低に減少。米経済は悲観論者を驚かせ続けている。しかし、次期米大統領のドナルド・トランプ氏の関税および移民に関する政策がインフレを押し上げることをエコノミストは懸念しており、一部のファンド運用者はリスクヘッジに動いている。
UBSアセット・マネジメントのハイイールド債ポートフォリオマネジャー、ザカリー・スウェーブ氏は「米国および欧州におけるハイイールド債ファンドへの多額の資金流入により、スプレッドが大幅に縮小している」と指摘。債券の空売りは大きな利益を生む可能性があり、クオンツ戦略を採用するヘッジファンドは機会を利用するだろうと述べた。
「マクロ経済の見通しが悪化すれば、ファンドが証券を空売りする正当な理由になる」とも述べた。
懸念材料はある。アポロ・グローバル・マネジメントのエコノミストによれば、米国の財政政策は「持続不可能な道」を進んでいる。S&P500種株価指数構成企業利益の下方向のサプライズは増えており、翌日物レポ市場の資金調達コストは懸念すべき速度で上昇している。さらに、ドイツ経済は停滞し、中国では一連の景気刺激策の後も広範な成長回復はまだ見られない。