「SDGsという確かな逆風が吹いている」 ホタテ貝殻でヘルメット開発、社員16人のプラスチック加工企業が生み出すヒット商品と、ものづくり哲学とは
◆地域の課題だった「ホタテの貝殻」を生かすホタメット
――南原さんが手がけたもう一つの製品に、ホタテの貝殻から作られたヘルメット「ホタメット」がありますが、どういう経緯で開発したのでしょうか? きっかけは、私のSNS発信でした。 年間で約25万トンが廃棄される卵の殻でつくったエコプラスチックを紹介した投稿が注目を浴びて、「私の地元ではこんなゴミがあるんです」「これはプラスチックに使えないですか?」などと数々の反響が届きました。 その中で、北海道の猿払村(さるふつむら)がホタテの貝殻の処理に困っているという話を知りました。 猿払村はホタテの水揚げ量日本一に何度も輝くほどの、ホタテの一大生産地。 ホタテの貝殻は水産系廃棄物として年間で約14万トンも発生し、堆積場所の確保や地上保管による環境への影響が、地域の課題になっていました。 ホタテの貝殻の主成分は炭酸カルシウム。 これは、新しい素材に生かせるのではと考えました。 ――ここでも、地域の声に耳を傾けることが新製品の開発につながったのですね。なぜ、ヘルメットに加工しようと考えたのでしょうか。 「アームハンドル」での成功体験が、本当に大きかったと思っています。 社会が抱える課題・問題を解決するという考えに集中したことが、結果的に会社の利益にもつながりました。 ヘルメットを選んだのは、「次は防災用品をつくりたい」と考えていたからです。 日本は地震が多いという大きな課題を抱えた国です。 「災害時に身を守れるものをつくりたい」という思いと、ホタテが貝殻で自身を守っている姿から着想したのが「ホタメット」でした。 ――甲子化学工業の事業承継は、プラスチック加工技術という経営資源を活用して新たな事業に挑戦する、いわゆる「ベンチャー型事業承継」の典型と言えると思います。今後はどのような道を進んでいくのでしょうか。 課題の近くには、必ずビジネスチャンスがあります。 現場とのコミュニケーションを取りながら、軽いフットワークでステップを進めていける、中小企業の強みを生かせるビジネスモデルだと考えています。 もちろんその根底には、しっかりとした「ものづくり」の技術が必要。 私たちはものを作るのが大好きな人が集まっている会社なんです。 社会の課題を解決する「ものづくり」が、甲子化学工業の進むべき道だと確信しています。