学童保育の指導員「年収150万円未満」が半数、増える「非正規公務員」 処遇改善は道半ば…
◆増える非正規公務員、「会計年度任用職員」制度にともなう課題も
全国連協では「常勤職員が複数必要だし、公務員のような働き方が理想です」と声を上げ続けてきたという佐藤さん。しかし1990年代に入ってから、多くの自治体はコストカットに力を入れて、正規職員の数を減らし非正規職員を増やしてきました。学童保育の指導員も例外ではありません。 さらに学童保育の運営の外部委託も進み、公営の学童保育が減っています。代わりに運営を担っているのは、社会福祉協議会や地域運営委員会、NPO法人、民間企業などです。 公営の指導員は、非正規の「会計年度任用職員」であることも多くなっています。会計年度任用職員制度は、非正規公務員の地位を安定させることを目的に2020年4月から導入されましたが、任期は原則1年以内で(再任は妨げない)、昇給もありません。 「学童保育は本来、子どもたちが何年間も通い続ける場所です。しかし指導員の任期が1年だと、来年の運営はどうするかという大切な話ができません。子どもたちと安定的な関わりを継続するには、指導員が長期的に安定して雇用されることが必要です」(佐藤さん)
◆処遇改善の補助金、常勤職員配置など国も改善を掲げているが
国は、指導員の処遇改善のために補助金を用意していますが、なかなか利用されません。 たとえば、処遇改善のための「放課後児童支援員等処遇改善等事業」を利用した自治体は20.18%だけ。勤続年数や研修実績などに応じた賃金改善に必要な経費の補助を行う「放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業」を利用した自治体も18.49%にとどまっています。 「民間企業の場合、100%指導員の処遇に反映されないこともあるかもしれません。また、複数の自治体で施設を運営していて、補助金の有無が自治体によって違うと、差をつけないために補助金をとらないほうに合わせる可能性もあります」(千葉さん) 最近は常勤職員をおいて、きちんとした保育をしたいという声も少しずつ届くようになって、2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」では、常勤職員配置の改善が掲げられています。 「子どもたちの放課後の生活の質を支えるのは指導員です。そこにどれだけ価値をおけるかだと思います。指導員になるための学びをして資格を得ている人たちが、ちゃんと仕事を継続できる処遇や環境を整えることが、子どもたちの豊かな生活につながっていくと思います」と佐藤さんは強調します。 以前に比べれば処遇は良くなっているものの、変化はゆるやかな上、長く勤める人が少ないため、改善を実感しにくいのが現状。学童保育の指導員の処遇改善の余地はまだ大きいといえそうです。
▼古屋 江美子プロフィール
子連れ旅行やおでかけ、アウトドア、習い事、受験などをテーマにウェブ媒体を中心に執筆。子ども向け雑誌や新聞への取材協力・監修も多数。これまでに訪れた国は海外50カ国以上、子連れでは10カ国以上。All About 旅行ガイド。
古屋 江美子(ライター)