世界自然遺産の価値発信 鹿県の奄振計画・奄美大島
鹿児島県がこのほど策定した新たな「奄美群島振興開発計画」(2024年度~28年度)では、群島の自立的発展に向けた基本的な考え方や取り組みとともに、各島の方策も示している。人口減少社会に対応しながら農業や観光振興、移住・定住促進などにつなげるため、県が地元市町村などと連携して推進していく主な施策を、島ごとに5回に分けて紹介する。 奄美大島では、タンカン、マンゴー、スモモ、パッションフルーツといった果樹の栽培技術や品質向上に努め、さらなる産地拡大を目指す。養殖業(カンパチ、クロマグロなど)は漁業環境の保全、疾病対策などを進める。 近年、被害が深刻化しているソテツのカイガラムシ対策では市町村との連携を強化。アマミノクロウサギといった希少野生動物のロードキル(交通事故死)対策などにより、生態系・生物多様性の保全を図りつつ、奄美大島世界遺産センターや奄美自然観察の森などを活用して遺産価値の普及啓発、情報発信に取り組む。 観光関連では、奄美パーク・田中一村記念美術館を群島全体の観光拠点に位置付け、周遊性のある観光ルートづくりや、奄美ならではの魅力を体験し、宿泊できる取り組みを支援する。 名瀬港は引き続き外郭施設や係留施設の整備を進め、老朽化が進む旅客ターミナルの建て替えなどを行う。国道58号では、名瀬周辺の交通混雑の緩和を図るほか、空港や港湾へのアクセス向上などに努め、島内交通の円滑化を進める。 加計呂麻島、請島、与路島では、自然海塩など「健康」や「癒やし」をテーマにした特産品の生産振興を図るほか、ソテツの実の生産体制や集出荷体制を整備するなど、地域特性を生かした特用林産物の産地づくりを推進。古仁屋の「せとうち海の駅」を拠点に、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島などを観光船で周遊できるクルージングネットワークの形成にも取り組む。 加計呂麻島では、各集落と港湾を結ぶ県道安脚場実久線の整備を推進し、利便性を向上させる。