家族ががんと診断されたら 付き合い方を家庭医が解説 かける言葉は?どう介護するか?勝ち負けのない生き方
介護者へのケア
N.C.さんのように、家族ががんになったときには、がんになった患者だけでなくその人を介護する人たちへのケアも重要であり、特に家庭医は忘れてはならない。 確かに、愛する人の介護をすることにはいくつかの良い点はある。自分が対象となる人の不快感を和らげているという人間的な満足感、その人から必要とされていると感じること、さらに、人生により多くの意味を見つけることなどが臨床研究から報告されている。 しかし一方で、介護することは介護者に身体的、心理的、経済的負担をかけることにもなる。介護者にとって、介護の必要性が持続的(終わりが見えない!)、制御不能(どうしたらよいかわからない!)、予測不能(次どうなるかわからない!)と思われれば思われるほど、ストレスは大きくなる。 さらに、介護者が患者と同居して長時間の介護をしなければならない場合、他に介護者の代わりがいないように思われる場合、介護者への情報や教育が十分でない場合、そして患者に認知症や行動の異常がある場合には、介護の負担が増大する。多くの場合、これらの条件が重なる介護者は患者の家族、特に配偶者である。
家庭医は、すべての介護者についてその負担の大きさを見積もる(評価する)必要がある。その上で、必要に応じて家庭医が行うことができるケアとして、次の4項目が複数の臨床研究を総合した上で推奨されている。 (1)家庭医が介護者に直接支援を提供できる重要な方法として、介護者に休息をとり、自分の健康と病気の予防に気を配り、サポートグループに参加し、必要に応じてレスパイトケア(介護者の休息のために、施設などに介護の代理をしてもらうこと)を求めるよう奨励する (2)介護者に教育や情報が必要な場合、そのニーズを満たすための適切な支援や資源へ誘導する (3)患者に特定の慢性疾患(認知症、がん、脳卒中、心不全など)がある場合、その患者の介護者に対して心理教育、ケア技術トレーニング、カウンセリングを提供することは、介護者の負担を軽減し生活の質を向上させる中程度のレベルのエビデンスがある(エビデンスのレベルについては、また別の機会に話したい) (4)介護環境が変化する移行時や終末期には、患者と介護者に、事前のガイダンス、アドバンス・ケア・プランニング(ACP; advance care planning)を話し合うことの支援、そしてそのための適切な資源に関する情報を提供する