DVなどの被害に遭いやすいケースも。「依存性パーソナリティ障害」とは?
「依存性パーソナリティ障害」は、DVなどの被害に遭いやすいケースも
――相手に判断をゆだねたり依存したりしていると、DVの被害者になりやすい気もしますが…。 藤野先生 実はその通りで、このタイプとずっと一緒にいられる人というのは、相手を支配するタイプなことも多いんです。しかも、本人は見捨てられることを恐れて、意見を主張したり反論したりしないので、身体的・精神的虐待の被害にも遭いやすいといえます。 ――ひどいことをされたとしても、一緒にいてくれることのほうが重要だと思い込んでいるわけですね。 藤野先生 そうですね。相手から離れてしまうと、自分には何もないし、決められないから不安になる。そこまで考えが整理できないまま、「よくわかんないけど離れられない」っていう人もたくさんいます。 ――依存先を増やすために人間関係を広げることはないのでしょうか? 藤野先生 どちらかというと、ひとつの依存先を逃さないために人間関係が狭くなります。例えば、友達と飲んでいるときに依存相手に呼び出されても、すぐに行けなかったりしますよね。 それから、依存相手との関係を否定されることは大きな恐怖なので、よく「この関係は私にしかわからない」という言葉が出たりします。つまり、他人は時に自分たちの依存関係を邪魔してくる存在になるわけです。 「依存性パーソナリティ障害」の改善や、周囲の人ができること ――なるほど…。しかもDVの場合、依存相手から他人とのかかわりを断つように言われるケースもありますし、ますます自覚するのが難しそうですね。 藤野先生 そもそも自分が困っていなければ「パーソナリティ障害」という病名はつきませんが、このタイプは周囲に害をなすというよりも、自分がしんどくなるケースが多いので、他のタイプと比べると受診につながる可能性が高く、状況が改善されやすい疾患ではあります。 ――どうしたら改善につながるのでしょうか。 藤野先生 背景に「他人から認められたい」という思いがある一方で、そのための行動選択には不安や否定への恐怖、責任を放棄したい感情が付きまといます。相手に依存することで、そこをすべてごまかしてしまっている自分に目を向けると、少しずつ変わっていくことができます。そのためにも、今まで失敗しないために他者にゆだねていた部分を抜け出して、ちょっとずつ練習していくことが必要です。 ――そのとき、まわりの人にできることはありますか? 藤野先生 不安を感じさせないように、小さなことから本人に決定をさせて、それを尊重することが大切です。「自分でこれを選んだ。みんなも満足した」という成功体験を積ませてあげるわけです。そういう経験を、安心できる場所で積んでいくと、不安を解放することにつながります。 ――少しずつリハビリをしていくわけですね。 藤野先生 はい。大きな決断ではなく、例えば「AとBのお菓子、どっちがいい?」みたいなことでかまいません。外食するのに、何を食べに行くか決められない人もいますから。 ――逆に、まわりが気をつけることはありますか? 藤野先生 本当に気をつけてほしいのが、本人を支配しないことです。自分で決められない人と接すると、周囲は決めてあげたり、提案してあげたりと、無意識のうちに支配者になりやすいんですよね。 依存される=相手が自分の言うことを聞く状況は、場合によっては気持ちがいいので。相手が大切な人であるほど手や口を出したくなりますが、支配してしまわないように意識したほうがいいと思います。 構成・取材・文/国分美由紀