全固体電池の量産化も見えた! 日産の次世代バッテリー生産最前線を取材、不可能を可能にしたブレイクスルーを解説
車体の構造と生産方式の革新「次世代モジュラー生産」
建設中のパイロットライン見学の前に行われたのは、日産の現在進行中の技術開発の説明。 【写真】【日産の技術的ブレイクスルー】 発表の様子と日産EVの写真をみる (102枚) まずは、日産の執行役副社長である坂本秀行氏から、次世代EVの構造と生産方式の革新となる「次世代モジュラー生産」が説明された。 これは、床下に並べたバッテリーの上にシートなどの内装を取り付け、ボディは別工程でくみ上げる。最後にバッテリーと内装を装着した車両の下側と、上側のボディを合体させるというのだ。 従来のように、ボディを先に作り上げて、その後、作業員が中に入り込みながら部品を取り付けるのとは、まったく違う手順となる。 この工法の良いところは、露出しているバッテリーの上に内装部品を取り付けるため、労力が少ないという点にある。 また、メインラインが短くなり、細かな部品を先にくみ上げておくサブラインが長くなるのも特徴だ。この時、サブラインは労力が、さらに少ない。これにより、シニアや育児中の従業員などが、より働きやすくなるというメリットもあるという。
全固体電池の課題と技術的ブレイクスルー
続いては、常務執行役員であるパワートレイン・EVコンポーネント生産技術開発本部担当の村田和彦氏と、常務執行役員のパワートレイン&EV開発本部担当の生浪島俊一氏から、日産の全固体電池の開発状況の説明が行われた。 お2人の話をまとめると、現在は製品/生産技術開発のフェーズにあり、いくつもの技術的ブレイクスルーにて課題を克服している最中だという。 日産が開発する全固体電池は、硫化物固体電解質とリチウム金属負極を採用する。これにより従来の液体の電解質を使うリチウムイオンバッテリーよりも、性能面(1000Wh/L、充電時間短縮、熱に対する強さ、安全性、材料確保、コストなど)で、より優れた製品になるという。 材料面での課題として、硫化物固体電解質に使う複数の材料同士の接触面積の最大化というものがあった。液体を使う電解質なら、材料同士のサイズや形状が異なっていても、密着性に問題は起きない。 しかし、固体の場合はそれに困難であるため、繊維状バインダー(接着剤)を使うことで解決したという。繊維状のバインダーは隙間が大きいため、リチウムイオンの移動を阻害せず、材料同士の密着度を高めてくれるというわけだ。