新型コロナで花見自粛も来年まで待てない高齢者に「今年の桜」映像を無料配信「室内でも花見気分を楽しんで」
手掛けたのは高齢者施設の団体ツアーや介護付き個人旅行を実施する大阪の会社
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、花見の自粛が続く中、高齢者施設の入居者に、今年の桜の映像を無料で届ける配信サービスが、13日から始まる。開発者は「外出や家族との面会を制限された高齢者の皆さんに、室内でも花見気分を楽しんで、少しでもくつろいでもらえたら」と、静かに意気込む。 【拡大写真】春山社長の父親で創業者の春山満さん。車いすで全国を駆け回った
外出や面会が制限された高齢者に室内で花見気分を
この配信サービスは「SAKURAデリバリープロジェクト」で、手掛けたのは高齢者施設の団体ツアーや介護付き個人旅行を実施するハンディネットワークインターナショナル(大阪府箕面市)。同社は高齢者施設の入居者を対象に、春の日帰り花見旅行を開催して好評を得てきた。 しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、不要不急の外出自粛要請を受け、「来年も楽しめる」との判断から花見の自粛が続く。春山哲朗社長も花見旅行の中止を決定。半面、行動の制限を余儀なくされている高齢者のつらさが脳裏から離れない。
今年撮影した桜の映像を届けることで室内で花見気分を
「新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、高齢者施設では入居者の外出は原則中止となり、家族との面会もままなりません。旅行はもとより、近くの公園でのささやかなお花見会も今年は見送りでしょう。私たち若い世代は来年まで桜の開花を待てますが、高齢者の中には今年のこの春の桜が最後になる方もいらっしゃいます。来年まで待てない皆さんに、何としても今年の桜を見せたいという思いが募りました」(春山社長) 花見自粛のニュース報道に日々接するうちに、実際の花見ではなく花見の映像に着目した。 「桜と弁当がセットになれば花見ができる。弁当は施設側に用意してもらい、私たちが今年撮影した桜の映像を届けることで、室内でも花見気分を味わってもらえるのではないかとひらめきました」 プロジェクトの立ち上げは先月23日。以来、今月上旬にかけ、北上する桜前線をにらみながらあわただしく進んだ。
吉野や鮎河など関西5か所の桜を撮影
吉野(奈良県)、大覚寺前の大沢池(京都府)、鮎河(滋賀県)など、関西の桜の名所5か所を撮影。山肌に広がるヤマザクラが「一目千本」と賞される吉野では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、例年運行の臨時バスが停止に。カメラマンは機材を携え坂道を歩いて標高の高い撮影ポイントへ。春山社長もプロデューサーとして一部の撮影に立ち会った。 「花見をする皆さんの目線を意識し、桜を下から見上げる映像を心がけました。平板な構成にならないよう、桜と池、城、山並みなどを組み合わせた情景も盛り込んでいます」 延べ14時間の映像を1時間程度に編集。13日正午から、YouTube「Good Timeチャンネル」で、無料配信する。 「体調がすぐれない高齢者の方でも、リクライニングベッドを起こして、介護スタッフがかざすスマートフォンで無理なく桜の映像をご覧いただけます。できれば広いスペースに集まり、プロジェクターの大きな画面で見ていただけたら。いつもより少し豪華な弁当を広げ、お花見らしいいこいのひとときを楽しんでください」 求められるバリアフリーは建物の施設ばかりではない。心の花見で心の健康をというわけだ。