暫定税率廃止で合意も実現いつ? 減収穴埋めや販売混乱置き去り
与党が20日決定した令和7年度税制改正大綱には、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止方針が明記された。手取りを増やす政策を掲げる国民民主党の主張を受け入れ、ガソリン価格を下げて物価高に苦しむ家計を支援する。ただ、廃止に伴う多額の税収減の穴埋めや流通現場の混乱への対応といった課題を巡る議論は手付かずだ。政府・与党は8年度税制改正に向けての議論を想定するが、国民民主は7年度からの廃止を訴えており、実現には曲折も予想される。 ■廃止後の課題協議進まず ガソリン税は現在、1リットル当たり53・8円で、本則税率分28・7円と暫定税率分25・1円からなる。暫定税率は昭和49年に道路整備財源に充てるために始まり、その後も厳しい財政事情などを背景に維持されてきた。 先の衆院選で大きく躍進した国民民主は、7年度税制改正の最重点項目として暫定税率の廃止を自公両党に迫った。3党は今月11日に廃止で合意した。 しかし、暫定税率の廃止に伴う課題についての協議はほとんど進んでいない。最大の懸念は国と地方合わせて約1兆5千億円にも上る税収減だが、これを補う財源のめどは立っていない。暫定税率の廃止によってガソリン価格が下がった直後はガソリンスタンドに客が殺到するなど流通現場が混乱する恐れもあり、周到な準備も必要になる。 ■ガソリン価格高騰で廃止の声高まるか 3党の合意書や与党税制改正大綱には暫定税率の廃止時期は示されなかった。政府内には「7年度に廃止するのは困難」(関係者)との見方があり、8年度税制改正の議論で俎上に乗る可能性が指摘されている。 しかし、国民民主の玉木雄一郎代表(現在は役職停止中)は今月18日、X(旧ツイッター)で、「『ガソリン減税』を来年度から速やかに実施することが必要で、先送りすべき課題ではありません」と訴えた。 政府は19日からガソリン価格を抑える補助金を縮小した。足元では1リットル当たりの小売価格は175円程度だが、2~3週間かけて180円程度に上がる。7年1月16日からは補助をさらに減らし、最終的に185円程度に値上がりする。政府によると、1カ月に36リットルを使う家庭の負担は月約360円増えるという。 ガソリン補助金はすでに多額の予算をつぎ込み、脱炭素の流れなどにも逆行するとして石破茂政権は出口を模索するが、消費者の一部には反発もある。暫定税率の廃止を急ぐよう求める声が強まる可能性もある。(中村智隆)