マダガスカルの謎の遺跡で定説覆す発見、ゾロアスター教の楽園か、建造が数百年早かった
骨の不在
ゾロアスター教徒がテネキーで死者を埋葬したという説における問題のひとつは、岩のくぼみの中から人間の骨が一切見つかっていない点だ。論文の著者らはこれについて、後世の人々が骨を回収し、「黒魔術」に使用したのではないかと推測している。 遺跡で最も注目すべき構造物は、グランデ・グロット(大きな横穴)、別名グロット・デ・ポルトガイ(ポルトガルの横穴)と呼ばれる、侵食によって円形になった崖に作られた広い空間だ。 グランデ・グロットの一部は、整然と積み上げられた砂岩のブロックによってが閉ざされており、その奥には丁寧に掘られた幅数メートルほどの横穴がある。 付近の岩壁には似たような横穴が数十個存在し、また150メートルほど南東に位置するプティ・グロット(小さな横穴)では、岩の太い柱やベンチが残るように作られた横穴が見つかっている。
古代の集落?
シュルース氏らは、横穴があるエリアを囲む石壁の跡を確認しており、また周辺一帯の広さ約2万8000平方メートルに及ぶ範囲からは、さらに多くのくぼみや儀式が行われた場所が見つかっている。 加えて、横穴の1.5キロほど西を流れるサハナフォ川の近くでは、数百もの石造りのテラス状構造物の痕跡が発見された。シュルース氏らは、これらの構造物の一部は、テネキーの岩のくぼみに遺骸を葬った人々が使った住居だったのではないかと考えている。 氏によると、一帯の土壌は固いため、農業が行われていたとは考えにくいという。 しかし、住民は別の手段で食料を得ていた可能性がある。サハナフォ川にはウナギが豊富で、付近の森や平原にはイノシシやキツネザルが数多く生息しているため、シュルース氏は、テネキーの最盛期に一帯に暮らしていた人の数は数百人にのぼると推測している。 2025年に予定されている次回の調査において、シュルース氏らは、残された謎の解明に取り組みたいとしている。テネキーのような人里離れた場所になぜ人が住み着いたのか、そしてなぜここが放棄されたのかは、まだわかっていない。しかし、ひとつの可能性としては、集落が攻撃を受けたことが考えられる。 「テネキーは避難所だったのかもしれません」とシュルース氏は言う。 石壁の一部は、一般には壁が必要ないと思われる場所に建てられている。 「この事実は、石壁が防御的な意味合いを持っていたことを示唆しています。もしそうであるならば、それは一体誰に対する防御だったのでしょうか」
文=Tom Metcalfe/訳=北村京子