今祥枝の「2024年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 『SHOGUN 将軍』が象徴する時代の変化
『ザ・ディプロマット』『旋風』など政治を題材とした娯楽作も力作揃い
3位以下はほぼ順不同。なんやかんやでまさに激動の時代といった変化を感じたここ数年の映像業界も、2024年は行き着くところまで行った感がある(まだ真の底には達していないのかもしれないが)。だからといってはなんだが、いっそ自分の中では何か吹っ切れたものもあり、近年で一番楽しく世界中の作品を楽しめた一年だった。中でも、大好きなジャンルとしての政治を題材とした娯楽作に久々に力作が多くテンションが上がった。ご贔屓の『ザ・ディプロマット』はまさかの展開をたどった現実の米大統領選の顛末を考えると、奇妙な因縁すら感じるアリソン・ジャネイの存在と幕切れに歓喜。俄然、シーズン3が楽しみになった。破天荒さも宗教色の強さも好き嫌いはわかれるだろうが、『旋風』の韓国の腐敗した政治を断ち切らねばならないとする作り手の熱意と志に心打たれた。 近年は正月に問題意識の高い作品を放送して話題を呼ぶ英ITVの『ミスター・ベイツvsポストオフィス』は、誰もがわかりやすく現在進行形の事件を伝えて国民の共感を呼ぶことに成功し、事件の調査を前進させることに一役買った作品。まっすぐな作りも好感度大で、エンターテインメントに社会を動かす力があることを改めて思い出させてくれた。なぜ今IRAの内ゲバを描くのかと思った『セイ・ナッシング』は、「大義のために戦うことの意味」と「あの時、どう戦えば良かったのか」という問いが非常に今日的で、個人的に『シビル・ウォー アメリカ最後の日』に抱き続けている違和感の理由を見た思いがした。前述の政治ドラマや『イカゲーム』S2も含めて、総じて民主主義とは何かを考えさせられたとも言える。 残りの作品に、もはや私的殿堂入りの『窓際のスパイ』S4(Apple TV+)や新作の『グランパは新米スパイ』(Netflix)、『エルズベス』(Paramount+)、『モスクワの伯爵』(Paramount+)などの選外になった作品を加えると、昨年に続き王道感のある秀作群に、こよくなる愛する英米TVシリーズの底力と醍醐味に舌鼓を打った一年だった。日本未上陸作品だが今年のベストの1本として『My Brilliant Friend(原題)』S4が素晴らしかったことを付け加えておく。
今祥枝