WBC則本のストッパー起用の是非
そもそも「牧田ストッパー」という発想も、権藤投手コーチが考えたもの。だが、相手チームとの相性や、コンディションを見ながら、「則本ストッパー」という選択肢も、2次ラウンド、準決勝、決勝と進む過程の中で持っておきたかったのかもしれない。第2回大会では、山田久志投手コーチが、ダルビッシュ有を大会途中にストッパー転向させて成功したが、権藤投手コーチも、そういう魅力を則本に感じていたのだ。 「プレミア12」では、ストッパーを決めきれなかったことが、敗因になっていた。そのときもストッパーに不慣れな則本をイニングまたぎで続投させたことで失敗した。則本は、楽天では先発で、それ以来ストッパー経験はない。牧田が、「7、8回をいくのと9回にいくのでは、1球の重みも含めてぜんぜん違う」と語っていたが、ブルペンの専門家でさえ、そう感じる役割である。 本来、先発の則本がストッパーに適応することは簡単ではないのだ。確かに、誰がストッパーになってもおかしくないほどの面子が侍ジャパンには揃ってはいるが、流動的勝利方程式の運用は非常に難しいのである。 いつ、どこで使うか、の役割を事前に明確にしておかねば、準備にも戸惑う。 大会前から「則本ストッパー」が持論だった(※則本ストッパーの場合は、全体の選出構成も変わるそうだが)第一回WBC優勝メンバーで評論家の里崎智也氏は、オランダ戦の失敗をこう分析した。 「調子と相手との相性を見てストッパーは流動的に決めていきたい、というのがベンチの考えだったのでしょう。結果としては失敗したのかもしれないが、則本のボールは悪くなかった。キューバ戦のときのようにタイミングが合っていないボールをなんで使わないの?というような配球もなかった。ただ打たれたところは変化球が甘く入った。同点打も、ボールは高かった。あれだけのオランダのメンバーを相手にしてコントロールミスは許してくれない。 私は、則本の起用方法は間違いではないと思うが、ただ牧田が使えるという目処が立った。ここからもう牧田をストッパーから外す理由はないよね、というのが感想。勝ちゲームの中で、今後の方針がしっかりと確認できたことは収穫ではないか」 勝利はベンチの失敗を打ち消しミスを冒してしまった選手を救う。試合後、則本は「みんなに救ってもらいました」と、しみじみと語った。4時間46分もの死闘を乗り越えたチームには、結束という名の一体感、勢いが生まれる。おそらく則本のストッパー起用は、もう難しいのかもしれない。しかし、里崎氏が指摘するように、勝ちゲームの中でチームの進むべきスタイルがやっと明確になったことは、ポジティブに捉えていいだろう。