世界幸福度ランキング1位「フィンランド」の誰もが生きやすい社会作りの背景にあるもの[FRaU]
老舗からスタートアップまで 各産業で起こるイノベーション
気候変動に関するソリューションは、すべての産業で策定されている。例えば、フィンランドを代表する老舗ファブリックブランド〈マリメッコ〉は、木材パルプと水のみで繊維を生成するという世界初の技術を開発したスピンノヴァ社と協業。現在、アパレル・繊維業界の懸案事項である、製造時に排出するCO2や水の大量消費、合成繊維などの廃棄物の問題に取り組む。
また、国土の7割以上が森林で覆われるフィンランドでは、木材から作る代替プラスチックなどの製品開発も進んでいる。見た目はほぼプラスチックだが、植物を主成分とし、微生物により生分解されるバイオコンポジット材料の〈スラパック〉は、仮に容器が廃棄されたとしても、自然界にいる微生物が木の枝や葉と同じように分解し、土に還す。有毒物質やマイクロプラスチックが土壌に流れ出ることもない。この画期的な技術は、すでに大手化粧品メーカーなどが容器として採用している。
まったく新しい方法で食料問題に取り組むスタートアップ企業が〈ソーラーフーズ〉。気候変動問題は世界の農業にも大きな影響を与えていて、これまでのように農作物が育たなかったり、熱波や干ばつ、水害による被害も大きい。そこで開発されたのが微生物タンパク質「ソレイン」。自然界に存在する単一の微生物を取り出し、それをCO2をエサにして発酵させることによって増殖させるというもの。広大な土地を必要とせず、天候にも左右されず食料生産ができ、持続可能。「空気から作る食料」として期待されている。
環境授業がカリキュラムに 組み込まれている学校教育
教育面でも世界トップレベルの水準にあると言われるフィンランド。「OECD生徒の学習到達度調査」では常に上位をキープしている。あらゆる人々に平等な教育を与えることも福祉の一環と考えられており、誰もが無料で教育を受けられる権利を持つ。
見学したヘルシンキ郊外のラトカルタノ総合学校では「生徒たちに質の高い、平等な教育を提供する」ことが学校の第一の目標として掲げられる。