アサド政権崩壊で欧州に新たな移民危機の恐れ-ラミー英外相が警鐘
(ブルームバーグ): 英国のラミー外相は9日、シリアのアサド政権崩壊により、欧州全般に新たな移民危機が発生する恐れがあるとの警戒感を示した。英国はシリア難民申請に関する決定を留保した。
ラミー外相は英下院でアサド政権の崩壊について、「危険と機会が同時に訪れる瞬間だ」と指摘。アサド大統領を追放した反体制派の武装組織「シリア解放機構(HTS)」に関して英政府は「慎重な姿勢を維持している」と付け加えた。HTSは英国では依然として非合法のテロ組織とされており、HTSや紛争に関わる他の勢力が支配地域で民間人をどう扱うかを英政府は厳しく注視していくと外相は述べた。
外相は「多くの人々がシリアに戻り始めていることは、アサド大統領が退陣した今、より良い未来を望む彼らにとって明るい兆しではある。だが、今後の展開は多くのことに左右される」とし、「シリアへのこうした流れが、すぐに逆回転し、危険で違法な移民ルートを使って欧州大陸や英国を目指す人々の数を増やす恐れもある」と付け加えた。
英国への移民流入が過去2年間に記録的な数に達したことを示す統計を受け、スターマー首相は移民流入抑制の取り組みを強化している。英内務省は、現状を評価する間、シリアからの難民申請を一時保留すると発表した。
2015年の欧州における移民危機は、アサド政権による残虐な弾圧から逃れるためにシリア市民数十万人が国外に避難したことが一因だった。
原題:UK Warns Assad Downfall Could Trigger European Migration Crisis(抜粋)
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Ellen Milligan, Alex Wickham