エネルギー小国日本の選択(17) ── 変わるエネルギー業界の今
電力市場は、大手同士の競争に加え、東京ガスや大阪ガスなど都市ガスと、石油業界も入り乱れているため、利害関係が余計にややこしい。東京ガス、大阪ガスはそれぞれ東電、関電から切り替える顧客の受け皿になっている一方、ガス全面自由化後は都市ガスの顧客を取られ、防戦に回っている。JXTGホールディングス(HD)は、電力市場で東電の顧客を奪っているが、都市ガス事業では協力関係にある。 石油は石油で、少子高齢化やEVの普及を背景としたガソリン需要の減少、利益率の低さなど、事業環境は厳しい。経産省主導の官製再編が進み、大手3社の体制ができつつある。すなわち、今年4月にできたJXTGHD、業界2位の出光興産と4位の昭和シェル石油の連合、コスモエネルギーHDだ。出光と昭和シェルは既に合併で合意しており、出光創業家の反対はあるものの、合併に向かいつつある。3陣営の間でも、製油所が近かったり、ガソリンスタンドが同じ国道沿いにあったりと、経営合理化の余地がある。 ともあれ、生協や鉄道、通信会社も電気を売る時代だ。独自の会員向けサービスや、再生可能エネルギーによる発電をアピールするなど、新しい風を吹き込んでいる。それが電力会社をいい意味で刺激し、改善やアイデアに繋がる。 電力大手は変革を迫られている。実際に各社は変わってきている。戦前から続く社史や歴代経営陣の功績の重み、地元との関係の深さから、容易に脱原発に舵を切れないが、切りたがる幹部や社員は年々増えているようだ。 海外は、欧州を中心に脱原発の流れが鮮明となっている。地球温暖化対策の二酸化炭素排出削減のため、再生可能エネルギーの拡大方針は、世界の共通認識となりつつある。 日本では、オイルショックの教訓から脱石油資源が急がれ、原発が次世代のエネルギーを担ってきたという事実がある。原発は産学官、そして地元の利権が複雑に絡み合い、その装置の巨大さ故に、廃炉や計画撤回の決定を難しくしている面もある。 ただ、何かを決断すべき時かもしれない。