<上海だより>中国インフルエンサー事情(下)画像から生中継へ進化する網紅
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前回に引き続き、中国のネット上のインフルエンサーとされている「網紅(ワンホン)」について取り上げていきます。まず、前回までの内容を改めて整理するとともに、網紅と中国の若者の現在について、上海を拠点に中国の生活者について研究を続けている博報堂生活綜研(上海)鐘 首席研究員に聞いてみました。
中国におけるセルフィーとされる「自拍(ズーパイ)=自撮り」を通じて、自分を周りの人たちにもっと魅力的に見せたいという欲求が強いのは今の中国の若者たちの特徴と言えます。また、自分の特徴や特技などの個性を他者に対して宣伝することに抵抗が薄いとも考えられ、それが「自拍」を広めている原動力になっています。それに加えて、デジタルネイティブ世代に特化していうと、彼らはスマートフォンなどを操作することが極めて器用であり、そうしたデバイスを介してより多くの人たちに自分をアピールし、相互に情報交換をしている状況も関係していると思います。 さらには、最近の「網紅」の特徴として、「自拍」のような静止画にとどまらず、インターネット上での動画配信や、特に「直播(ジーボー)=生中継」という行動も増えてきているのが特徴と言えます。その根元にも、「自拍」のように自分の個性などをアピールしたい、チャレンジしたいという欲求があると言えるでしょう。一方で、もしかしたら多くのファンを獲得し、自分が有名になって企業のアンバサダーやタレントのような存在になれるかもしれないという幻想も多くあるかもしれません。
では、なぜそのような幻想が生まれてしまうのでしょうか。その理由として、この1年を通じた中国メディアの報道において著名男性タレントや大富豪が交際相手として網紅がよく取り上げられていたことや、特に「papi醤(パピちゃん)」という網紅の成功が大きな話題になったことが大きな影響を与えていると考えられるでしょう。papi醤は実質の活動期間が半年ほどで、ウェイボーの「粉絲(フェンスー)=フォロワー」は400万人を超え(2016年12月22日現在、2043万人)、WeChatでの配信記事1本のPVは数分で10万以上(10万PV以上の具体的な数値は非公開)を達成するという人気を獲得し、なんと1200万元(約2億円)の出資を受け、3億元(約51億円)の価値を設定され中国全体が震撼しました。ただでさえ投資ネタがごく普通の民間人でも話題に上がる中国で、企業ではなく一個人に対しての出資として考えると、驚愕の大型投資であり、2016年全体を見ても非常に大きな話題の一つとなりました。