「杏さんなら深掘りしてくれる」直感信じて託した「かくしごと」 関根光才監督
「かくしごと」で主演した杏は、ドラマなどのイメージを一新。理屈を超えた愛とうそで子供を守る母親を演じ、新たな〝代表作〟とした。関根光才監督は「生きてるだけで、愛。」(2018年)で鮮烈な長編監督デビューを飾った映像クリエーター。これが長編第2作だ。本作では虐待や認知症といった現代社会のリアルな課題を背景に置き、「ある事象をどう解釈するかを考えて創るのが好き」と語る。 【動画】その〝うそ〟は、愛か、罪か 「かくしごと」予告編
他人を自分の子供と偽って……
絵本作家の千紗子は、ある事情から長年連絡を絶っていた父孝蔵が認知症になったため、渋々故郷に戻り介護を始める。旧友の久江と会った帰宅途中に、久江が運転する車が少年をはねてしまう。記憶を失ってしまった少年の体に、千紗子は虐待の痕を見つけた。さらなる被害から守ろうと、少年にも周囲にも自分が母親だとうそをつき、父と3人で暮らし始める。初めはぎこちなかったが少しずつ心を通わせあい、新しい家族の形を育んでいたが……。 女性主人公を追いかける点では「生きてるだけで、愛。」と共通する。しかも、女性が起こす行動が「狂気じみていて感情的」な点も似ているが「あくまで偶然」と話す。「『生きてるだけで、愛。』は自分も俳優たちももっと若かったが、この作品は家庭や子供を持って、喪失を味わった人の物語」を淡々と表現したという。 原作は北國浩二の小説「噓」だが、どこにひかれたのか。企画が始まったのは16年。児童虐待の事件が頻繁に報じられていた頃だったという。「自分でも理由が分からないのだが、そうした記事を読むと震えるような気持になった。世の中に悲しいことはたくさんあるが、虐待はとりわけ目をそむけたくなるほど衝撃的で、ドキッとしていた」。といっても自身に虐待を受けた経験があるわけではない。 もう一つは、祖父が認知症になり亡くなったこと。「認知症への理解があまりない頃で、本など読んで知っていたらもっと理解してあげられた、という思いが残っていた」。二つのトピックが合わさり「千紗子という女性の視点に、より強く関心を持った」と話した。