憲法改正の手順は 国会発議はいつになる? 坂東太郎のよく分かる時事用語
憲法改正案の国会発議はいつ?
というわけで、「参議院で3分の2」に欠かせない(足りないと発議できない)公明党と日本維新の会が、それぞれ自民党の示す「4テーマ」に不満や懐疑を抱いています。そのあたりを解きほぐしておかないと、発議にまでたどり着けないでしょう。何だかんだと了承を取り付けても採決強行を繰り返したら、肝心の国民投票に悪影響を及ぼしかねないので慎重に歩を進めざるを得なさそうです。 最短コースは、18年の通常国会で憲法改正案を発議して年末までに国民投票を実施というパターンでしょうが、極めてタイトなスケジュールです。そこで、通常国会では改正原案の国会提出と憲法審査会の審議入りぐらいにとどめて改憲現実化の印象を与えるまでとし、9月の自民党総裁選で安倍首相が再選された後に、臨時国会を召集して発議にこぎ着け、19年の早い時期に国民投票というプランも浮上しています。この場合は4月の統一地方選挙までに国民投票をしなければならないでしょう。 ここを逃すと、19年の通常国会での発議を目指すしかありません。やはり日程が大変です。前述の通り、通常国会は予算が先なので4月からスタートしたら、さなかに統一選と天皇陛下の退位(4月30日)および皇太子さまの即位と改元(5月1日)が待っているからです。国家の一大イベントの最中に発議云々で揉めまくるというのは避けたいところでしょう。 ならばいっそ、20年通常国会で発議はどうかという声もあります。だとしたら国民投票は五輪後となるでしょう。
国民投票の時期はいつ?
国会による憲法改正案の発議から国民投票までは、「60日から180日」と決まっているので、「いつ発議されるか」と同じ意味合いとなります。18年内は現時点で視界不良。19年は大急ぎで発議しないと、あっという間に4月の統一選、天皇退位、新天皇即位・改元とぶつかる困難な日程となってしまいます。 そこで注目されるのが、19年7月の参院選。国民投票を同日で行うのはどうかという仰天プランを唱える向きもあります。しかし、公職選挙法と国民投票法という異なるルールが並立する状態で突入すれば、有権者の混乱は必至ですし、参院選ともなれば、公明や維新も含めて、党の独自色を出さざるを得ないので、遠心力が働く恐れがあります。何より参院選をしながら「合区解消にイエスかノーか」を問うのは奇妙ですしね。 といって、参院選後というのも難しい。選挙で改憲勢力が3分の2を失えば、発議後であったとしても正当性に疑問符がつくし、発議前ならばすべてが“元の木阿弥”です。9月にラグビーW杯が日本で開催され、秋には新天皇の即位の礼が催されます。いずれも世界中から要人が集い、特に即位の礼で首相がてんてこ舞いの「即位外交」で忙しくなるのは必至。10月1日には消費税10%引き上げが予定されているので、それまでに「上げるかどうか」の判断も必要になってきます。 初めての国民投票なので、推進側には当然「否決リスク」もあります。自民党は、衆議院は与党で3分の2、参議院で単独過半数の議席を持つので、予算案や法律案では基本的に「否決リスク」はほぼありません。ゆえに恐ろしい。欧州連合(EU)残留派のキャメロン英首相と議会上院改革賛成派のレンツィ伊首相は、国民投票で自らと異なる側の勝利を受けて辞任に追い込まれました。