憲法改正の手順は 国会発議はいつになる? 坂東太郎のよく分かる時事用語
意外にスケジュールは窮屈?
安倍首相は先の憲法記念日における「2020年までに施行」発言を、後に改憲への関心を高めたかったのが狙いで「スケジュールありきではない」と再三否定しています。しかしいったんスタートした以上、日程のメドなしではダラダラ続くだけ。メドとしての2020年は事実上残っています。 仮に「2020年12月31日の施行まで」とするなら、逆算すると、その半年前には新しい憲法を公布(広く国民が知れる状態に知ること)し、その30日前に国民投票を終えていなければなりません(筆者が設定した「準用」通りならば)。おそらく初の国民投票となるので、その運動期間は最大の180日(約6か月)を選択するとみられます。すると、国会の憲法改正案の発議は、遅くともざっと2019年11月までに行う必要があるでしょう。 今はまだ2018年1月。「まだまだ余裕がある」と思われがちですが、意外とスケジュールは窮屈です。まず18年、19年のそれぞれ1月から始まる通常国会は3月末まで予算が最大のテーマなので、改憲を国会で本格的に取りかかれるのは4月以降になります。18年9月には自民党総裁選が予定されていて、今のところ「安倍1強」は揺るがないとみられているものの、そこは「政界は一寸先は闇」。6月20日の会期末を大幅延長できるかどうかがカギになります。
自民党案の取りまとめはいつ?
現在の状況を見れば、改憲論議の主体となるのは、言うまでもなく自民党。憲法改正の「原案」を提出できる衆議院100人以上、参議院50人以上を優に超えるだけの議席があるばかりか、憲法審査会で過半数、衆議院で連立相手の公明党と合わせて「3分の2」を保持している上、参議院でも公明党や改憲に前向きな「日本維新の会」や無所属を含めて「3分の2」を確保しているからです。 ところが肝心要の自民党内で、意見集約が十分とはいえません。党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は昨年12月「憲法改正に関する論点取りまとめ」を発表しました。「4テーマ」が挙がっていて、一致をみたのは (1)47条改正。都道府県をまたがる合区を解消し、参議院議員選挙の半数改選(3年)ごとに都道府県から少なくとも1人が選出可能となるように規定する (2)26条に3項を新設し国が教育環境の整備を不断に推進すべき旨を規定する の2つ。一方で本丸とおぼしき9条と新設する緊急事態条項は2案を併記するに止めました。 (3)9条は (a)1項・2項を維持した上で自衛隊を憲法に明記する (b)9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する (4)緊急事態条項は (a)選挙ができない事態に備え、国会議員の任期延長や選挙期日の特例等を憲法に規定 (b)政府への権限集中や私権制限を含めた条項を憲法に規定 です。 9条の見解が分かれた主な理由は、「2項維持」案が安倍首相案であるのに対して、「2項削除」は2012年にまとめ、同年の総選挙で公約へ盛り込んだ「自民党憲法改正草案」にある「国防軍を保持する」が念頭にあります。「この公約で民主党から政権を奪還したはずだ」という筋論が党内に根強いのです。