「神騎乗です(笑)」“天皇賞・秋”イクイノックスvs.パンサラッサの名勝負…ルメールに「パンサラッサの大逃げが見えていたら」と問うと?
歴史的な大逃げによる勝利が、目の前に迫っていた。のちに世界へ轟く脚音を聞いたのは、その時だった。東京競馬場の6万人を超える大観衆を熱狂させた逃走と追走の2000mの真実を、主役2人が明かす。 発売中のNumber1107号「神騎乗伝説」に掲載の[名勝負ドキュメント]2022年 天皇賞・秋 イクイノックス&ルメールvs. パンサラッサ&吉田豊「見えざる逃走劇」より、内容を一部抜粋してお届けします。 【写真】「えっ!15馬身差?」パンサラッサ歴史的大逃げからのイクイノックス&ルメールの“神騎乗”を見る!
イクイノックスは最初から、特別な馬
クリストフ・ルメールが天皇賞の映像を見ている。実況が1000mのラップタイムを告げると、目を丸くして――ほんとうに大きな目を見開いて――言った。 「57秒4。速っ! (笑)」 あのレースでは、それだけパンサラッサの大逃げが衝撃的だったわけだが、映像を見終えたルメールは、満足げに言った。 「いい思い出ですね。神騎乗です(笑)」 2022年10月30日、天皇賞・秋はイクイノックスにとってはじめてのGI優勝となった。それがルメール自身にとって「いい思い出」なのだが、「イクイノックスは最初から、すごく特別な馬だと思いました」と言った。 「残念ながら、皐月賞で負けて、ダービーで負けて、絶対にGIに勝たないといけなかったから、天皇賞は勝ってよかった。イクイノックスの強さを見せました。だから嬉しかった。やっと勝ったって」 ドウデュースの2着に負けたダービーで、イクイノックスは左前脚にダメージを負った。それから休養し、天皇賞・秋は5カ月ぶりのレースになったが、脚は完治し、馬の状態は良くなっていたという。 「この馬は秋から良くなると思っていましたね。春の段階ではまだ大人じゃなかった。キタサンブラックの産駒でしたので、キタサンブラックとおなじで、レースごとに良くなってくると予想していて。天皇賞の2週間前に美浦トレーニングセンターで乗ってきました。フットワークとか、馬の状態は良かったですね。休み明けでしたので、まだトップコンディションではなかったけど、天皇賞でいいレースをするためには十分でした」 その天皇賞はパンサラッサが出ているので、ルメールは「イクイノックスにとっていいペースになると思った」と言う。 「レースの2日前に枠順とかを知ったら、プランをちょっと考えますね。パンサラッサ、ジャックドールもいたし、ペースは良さそうと思いました。ダービーでイクイノックスのスタートはあまり良くなかったから、今回はどんなスタートをするか。でも、ぼくのプランはミドルポジション(中団)を取れたらいいと思いました。そのあとは速いペースで、最後、イクイノックスは絶対に走れると思いました」
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