本日公開!『八犬伝』壮大なVFXと豪華キャストが織りなす8つの見どころは?
一方で、制作陣のこだわりも本作の見どころ。監督は、「この映画に人生を懸ける」と製作を切望し続けた『ピンポン』『鋼の錬金術師』シリーズなどの曽利文彦。「この世界に入ってから、『八犬伝』の企画が頭から離れたことは一度もありません」と語るほど、思い入れが深い。「絶対に映画化したい、ライフワークになってもいいから成し遂げたい」という強い想いから本作の企画がスタートし、その熱意が実を結び、人生を懸けて創り上げたエンターテインメント超大作が爆誕した。 それだけに、VFXとCGを活用したアートワークへのこだわりは目を見張るものが。“虚”パートに登場するアクションシーンでは、最新のデジタル技術を活用し、『アバター』『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』『アベンジャーズ』など世界的大ヒット映画に携わった上杉裕世が、VFXスーパーバイザーとして参加。屈指の名場面の舞台である「芳流閣」での戦いのシーンは建物の存在意義から見直して作られていたり、船が爆破するシーンでは、炎の上がり方まで緻密に計算されているなど、迫力溢れる「八犬伝」の世界観が見事に映像化されている。さらに、姫の飼い犬である妖犬・八房は、表情、体の大きさや骨格、筋肉の動き、体中にある“八つ”のぶちの配置に、毛を1本1本植えていくことで作り上げたもふもふな毛並みと、想像を超える細部にまでこだわりが詰まっている。
美術においては、リアリティを徹底的に追求。現存する日本最古の芝居小屋である香川県の金丸座が馬琴と北斎が観る歌舞伎の舞台として登場し、八犬士の1人・毛野が舞を踊るシーンでは、国宝である姫路城の廊下や正門がそのままの姿で映し出されるなど、歴史ある建築物が登場。一方で、“虚”パートに登場する城は徹底的なリサーチのもと、VEXで丁寧に映像化されており、没入感抜群の美術の数々によって、2つの異なる世界観が作り出されている。
そして、最後の見どころは、勧善懲悪へかける馬琴の熱い想いだ。「悪が蔓延る世の中だからこそ正義を貫く物語を書く」という信念のもと、『八犬伝』を書き続けた馬琴。映画では、鶴屋南北から「悪しき者が栄えるこの世の中こそ、辻褄のあわない世界だ」と持論を展開され揺らぐ場面も登場するが、自らの想いを貫き、両目を失明しても決して執筆を止めることはなかった。物語の語り手としてどこまでも正義を貫き続けようとする馬琴の実直な思いは、現代の観客の心にも突き刺さること必至と言えよう。(高橋理久)