世界経済のリスク震源地、インフレから政治・戦争・政府債務に移る
(ブルームバーグ): 世界経済は、予想外の追い風を受けながら年末に向かっている。インフレ鈍化を受け、可能性は低いがソフトランディングへの道筋が開かれている。ただ、経済面では好転しつつある一方で、政治面では困難が待ち構えている。
世界経済の見通しを脅かしているのは、接戦状況にある米大統領選だ。この結果次第で、世界の状況は大きく変わることになる。
これは、既に政府債務の拡大、中東の紛争激化、ロシアとウクライナの泥沼化する戦争、台湾海峡での緊張に見舞われている世界経済に追い打ちをかけている。
こうした緊迫した状況を背景に、今週米ワシントンで国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会と、主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。
IMFのゲオルギエワ専務理事は17日、年次総会に先立ち、「勝利の祝賀パーティーを決して期待してはいけない。私は関係者が若干高揚しながらも、幾分恐怖を強めてここを去ると予想しており、恐怖感から行動を加速させることを望んでいる」と述べた。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、今年の世界の国内総生産(GDP)成長率を3%と予想。これは2023年の3.3%を下回るものの、年初時点の弱気な予測は大きく上回る。
しかし、世界の主要国・地域の回復力は、これから試されることになる。
米大統領選の民主党候補、ハリス副大統領がバイデン政権の幅広い路線継承を示す一方で、対立候補のトランプ前大統領は、世界の貿易全体に衝撃を与えるような政策を打ち出している。
トランプ氏は全ての輸入品に最低10%、中国からの輸入品には60%以上の関税を課すことも辞さない姿勢を示している。ブルッキングス研究所のウェンディ・エデルバーグ氏とピーターソン国際経済研究所のモーリス・オブストフェルド氏の共同分析によると、これは「ビジネスに大混乱」をもたらす政策だという。
戦争と債務
貿易戦争の影が迫る中、ウクライナや中東では実際の戦闘が続いている。