≪安倍政権5年≫原発5基再稼動──エネルギー政策転換、国民に丁寧な説明必要
さらに電気料金を上昇させたのは、民主党政権が2012年7月に導入した太陽光発電などで発電された電気を買い取る固定価格買い取り制度の負担金だった。太陽光発電を中心に当初想定を大きく超える再生可能エネルギー設備が導入された結果、再エネ賦課金は2017年度には1kWh当たり2.64円まで上昇し、平均的な家庭の年間の負担額は8000円を超えた。 幸いなことに、再エネ負担金の上昇以上に化石燃料価格が下落したため(図-3)、電気料金も下落した。しかし、今年度に入り燃料価格は上昇しており、今後の電気料金は予断を許さない。
産業向け電気料金、最大4割近い上昇。製造業の全従業員3%賃上げ可能額に匹敵
電気料金の上昇は、私たちの生活と産業にどのような影響を与えたのだろうか。 日本の世帯平均所得は1994年に664万円の過去最高を付けた後、下落を続け2015年546万円になった。所得の下落は支出額にも影響を与える。2000年に31万7千円あった二人以上世帯の月額平均支出額は、2016年には28万2千円に1割以上下落している。 交際費、パック旅行費など支出項目は軒並み減少しているが、電気料金だけは2011年から上昇を初め2000年の9700円が最大時2014年に11200円になった。支出を切り詰めている家計には無視できない影響だ。 産業界、製造業が受けた影響は家計の比ではない。産業向け電気料金は最大時4割近く上昇した。製造業が支払う電気料金は年間1兆2000億円増加したが、この額は製造業の全従業員の月例給を3%賃上げ可能な額に相当する。
エネルギーの安全保障はどうなった? 原発停止で再び上昇した原油比率
安全保障はどう変わったのだろうか。原子燃料は、装着後数年間利用可能なことから、純国産燃料として自給率計算の対象になる。1973年に発生した第一次オイルショック時に日本は一次エネルギー供給の4分の3以上を中東からの原油に依存していた。 特定の地域に供給を依存する危険性を避けるため、エネルギーと地域の分散が進められ、2010年には原油の比率は40%を切ったが、原発の停止により原油の比率は上昇した。(図-4) 2015年時点で原油の83%、LNGの26%は中東から供給されている。日本の一次エネルギー供給に占める中東の比率は40%弱になる。エネルギー自給率が50%弱の欧州連合は、一次エネルギー輸入量の約30%をロシアに依存しているが、ロシアへの依存度を下げることに注力している。自給率6%の日本は更に供給源の分散を進める必要がありそうだ。