≪安倍政権5年≫原発5基再稼動──エネルギー政策転換、国民に丁寧な説明必要
原発のリスクと便益の比較、丁寧で具体的な説明必要
原子力発電の落ち込みを火力発電でまかなったので化石燃料の使用量が増加した。電力部門からの二酸化炭素排出量も増加し、1kWh当たりの二酸化炭素排出係数も悪化した(図-5)。温暖化対策には逆行することになった。 原発の停止により、電力価格、安全保障、温暖化対策において、日本は多くの問題に直面することになった。再エネも安全保障と温暖化問題を解決可能だが、常時発電できない太陽光などの再エネは、発電コスト以外の送配電、バックアップ電源のコストなどが必要となり、需要家の元に着いた時の価格は高くなる。価格競争力を持つのはまだ先のことだ。 一方、原発は事故のリスクという問題がある。事故のリスクと稼働により得られるメリットを比較し、安全の確認された原発の再稼働を決めたのが安倍政権だった。 廃炉が決定した原発を除く42基の原発の内、既に5基が再稼働しており、規制委員会による審査が進んでいることから、今後も稼働する原発が増えてくる。電気料金、安全保障、温暖化対策面では効果が期待できるが、原発のリスクともたらす便益の比較を国民に丁寧に説明することが政権には求められている。 2015年に発表された2030年の電源構成案(政権が現在見直し中)では、温暖化対策と価格競争力維持のため原発は20%から22%の発電電力量を担うことになっている。30基程度の原発が必要になることから、建て替え、新設も必要になる可能性がある。どのようにこの目標を達成するかも政権は国民に具体的に説明する必要があるだろう。 <NPO法人国際環境経済研究所・所長(常葉大学経営学部教授) 山本隆三>