【JJドラマ部】若者の「貧困」「格差」「復讐」がテーマのドラマ 『SHUT UP』がアツい!|JJ
個人の努力だけじゃ変えられない現代の貧困問題
小林:ドラマが深刻な内容なだけに、会話も暗くがちですが…、でも声を上げていきたいことですよね。ちなみにお二人に聞きたいのですが、若者の貧困について私たちができることって、何かあると思います? 本間:一人一人のマインドの話になるかもしれないんですけど、貧困や格差などの問題を個人の責任に帰結させないことだと思います。何でも自己責任っていう風潮が年々強くなっているけれど、それは時に人の口を塞ぐことになる。たとえば、「この人は貧しい境遇だったけど、こんなに成り上がったよ」と、レアケースを例にあげて、個人の努力の話にすり替えてしまう。 小林:『成りあがり』…矢沢永吉の名著のタイトルですね。 本間:えっと、それはよくわかりませんが(笑)。貧しさってバイタリティーを奪っていくし、残ったエネルギーには個体差があるのに、強い人を基準にして「おまえは努力が足りないんだ!」みたいなことを言われる。そうなると、弱った人がSOSを出せない社会になっていくんじゃないかと思います。 イマ:私が考えるのはシステム的なことです。例えば会社において、役職者を絶対に男女半々にするって決めるとか。男性社員は女性の上司と接することや、女性に役職で抜かれることに慣れていないから起こる軋轢も多いはず。あらかじめ数が決まっていれば、納得せざるを得ない。あと、今の部署は省庁と仕事することが多いんですけど、やっぱり管理職となると男性が目立ちますね。 小林:霞が関の女性管理職は全体の15%くらいと聞きます。まあ、官公庁に限らず一般企業でも男女半々は程遠いですね…。(2021年の厚生労働省の発表では企業における管理職〈課長相当職以上〉に占める女性割合は12.3%) イマ:そんな小林さんは? 小林:若い人たちに対して、どう接するかをいつも考えています。偉そうに説教することは控えるようにして、「私も同じだよ」とちゃんと弱みを見せる。上から目線でずっと話されていたら、言いたいことも言えなくなっちゃいますよね。あとは若い人たちから教わることですね。彼らの考えは私たちにないものだから、しっかりと聞いて、できるところは踏襲したい。 本間:(深くうなずく) 小林:たまたま3人とも何かを発信できる立場にありますよね。たとえば私なら文章や、ラジオで音声として発信もできる。「(若い人には)何にもないわけじゃなくて、何でもあるんだ」ということを伝えていきたいです。ドラマ序盤の由希、恵、しおり、紗奈みたいに、世の中に対して卑屈になる感情を共感しあうだけだと変わらない気がするから。 ◆『SHUT UP』あらすじ ドラマのテーマは「貧困、格差、復讐」。田島由希(仁村紗和)、川田恵(莉子)、工藤しおり(片山友希)、浅井紗奈(渡邉美穂)は同じ寮に住む同世代4人。それぞれがアルバイトを掛け持ちし、自身の収入で生活を支える苦学生でもある。ある日、恵の予期せぬ妊娠が発覚。その父親は名門大学に通うセレブ学生・鈴木悠馬(一ノ瀬颯)だが、自分の過失ではないと妊娠を認めない。そんな恵のために、中絶費用を稼ぐためにパパ活を始めた3人。ここから4人の運命が少しずつ、予期せぬ方向に動いていく。果たして最終的に勝つのは正義か、金か、地位か、それとも。 【ドラマプレミア23】『SHUT UP』はテレ東にて放送ほか、TVer、U-NEXT、Leminoにて配信中 ■小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。 ■元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。 取材・文/小林久乃 イラスト/lala nitta