夏のボーナス「伸びる業種、伸びない業種」統計データから分析してみた結果
今年も夏のボーナスの時期がやってきた。多くの企業で夏のボーナスは6月下旬から7月下旬に支給される。2023年の夏は7割弱の事業所がボーナスを支給し、全就業者のうち8割の人がボーナスを手にすることができた。 【全画像をみる】夏のボーナス「伸びる業種、伸びない業種」統計データから分析してみた結果 2024年は物価高で生活が圧迫されるなか、ボーナスの行方はより多くの人の関心を集めている。
今年の夏のボーナスは前年から順調に増加か
端的に、今年の夏のボーナスはどうなるだろうか。 ボーナス支給額に影響する要因には、「企業業績」と「人手不足/過剰感」がある。 まず、企業業績の面では、製造業は円安を追い風に、非製造業ではコロナ明け後の需要回復を背景に好調な状況にある。5月8日に発表したトヨタ自動車の2023年通期決算では、営業利益が日本の上場企業で初めて5兆円を超えたことが話題となった。上場企業全体で見ても、東証プライム市場の上場企業を集計すると、純利益が過去最高を更新するなど、企業経営を取り巻く環境は良好な状態が維持されている。 さらに、企業の人手不足感は強まっている。2021年2月以降、完全失業率は一貫して3%を下回る低水準で推移している。企業側の視点から見た人手不足/過剰感を示す日銀短観の雇用・人員判断DIによると、2013年以降、景気拡張が続くなかで人手不足が進んだ。 直近2024年3月調査でDI(全規模・全産業)は過去最も人手不足が深刻であるとの結果となった。
ボーナス動向に見る「人手不足による増額」
良好な企業業績と深刻な人手不足は、いずれもボーナスの増加要因になる。 当社三菱UFJリサーチ&コンサルティングの予想では、今年の夏の一人当たり支給額は前年比+2.9%となり、金額ではITバブルの好景気に沸いた2000年代前半の水準まで増加すると見ている。 もっとも、全ての業種のボーナスが横並びで増加するわけではない。 どの業種が「ボーナス増が多い」のか、そして逆に「ボーナスが期待ほど望めないのか」は多くの人が興味を持つところだろう。 以下で、調査をもとに、企業業績(経常利益)と人手不足の程度といったボーナスを決定づける要因について、業種ごとに確認してみよう。 推計にあたり、ボーナス増の要因を2つの要素で評価している。1つめは、企業業績だ。業績の良い業界は、平均的なボーナス引き上げの「能力」がより高いと言える。2つめは、人手不足の程度。人手不足が深刻であれば、企業は人件費負担を増やしてでも人手を確保しようとすることから、ボーナス引き上げの「動機」の強さが分かる。 まず、今回注目した12業種のいずれも、コロナ前との比較で経常利益は順調に回復、増加しており、いずれの業種もボーナス引き上げの「能力」は改善傾向にあることがわかる(図表1)。