夏のボーナス「伸びる業種、伸びない業種」統計データから分析してみた結果
ボーナスの伸びが小さいのは「対面型サービス業」「製造業・素材業種」か
一方、運輸・郵便や宿泊・飲食サービス、情報通信、化学などの業種では、ボーナスの増加幅は平均を下回りそうだ。 特に、運輸・郵便や宿泊・飲食サービスといった対面型サービス業のボーナスの増加は小幅にとどまるだろう。これらの業種では、2023年来、コロナ期間に手控えられていた分のリベンジ消費の動きが強まっているが、宿泊など観光に関わる業種では人手不足によって需要を十分吸収できていない。本来なら、人手確保のため、ボーナスをはじめ処遇を改善する必要があるが、経営に余裕がない企業が多く、ボーナスを増加させる余力に欠ける。 なお、運輸・郵便でも上述の建設業と同様、「2024年問題」に直面し、人手確保が急務となっている。ただし、建設業と異なり、コロナ禍で自己資本比率が低下するなど、業界全体でみると、経営に余裕がない。従って、ボーナスの大幅な引き上げは考えにくい。 また、全体的に業績が好調な製造業にあっても、化学など素材業種の状況は厳しい。化学は人手不足感が比較的強く、ボーナスを引き上げて労働力を確保したいところだが、資源価格の上昇と円安の進行で原材料の調達コストが膨らんでいることで業績が苦しい企業が多く、ボーナス支給額の大幅増は望めないと筆者は見ている。
高インフレでボーナスが「目減り」する業種
このように、対面型サービス業や製造業・素材業種のボーナスの伸びは全体の平均を下回る見込みだが、業種全体としては増益ではある。また、人手不足が深刻なため、ボーナス支給額自体は伸びこそ小さいものの、増加が見込まれる。 ただし、これらの業種では、インフレ率が下げ渋っていることを背景に、物価変動を加味した実質ベースのボーナス支給額は、前年比でマイナスとなる可能性が高い。 先述の通り、当社では全業種の一人当たりボーナス支給額を前年比+2.9%と予想している。一方、実質賃金の算出に使用される物価である消費者物価指数(帰属家賃を除く総合)の前年比は、依然3%前後と高い伸びが続いている。直近4月は、奇しくもボーナス支給額の伸びの予想と同じ前年比+2.9%だった。 したがって、全業種の平均値を下回る対面型サービス業や製造業・素材業種では、実質的にボーナスの目減りは避けられない。 特に、宿泊・飲食サービスや運輸・郵便は就業者数が多く、ボーナス目減りの影響は広範囲に及ぶ。 宿泊・飲食サービスの2023年の就業者数は398万人、運輸・郵便は349万人で、合わせて就業者数全体の1割強を占める。また、これらの業種の平均月収は全業種平均を下回っている。特に、宿泊・飲食サービスは全業種平均の8割弱にとどまっており、ボーナス支給額の「実質目減り」が生活に及ぼす影響はかなり大きいとみられる。 2024年の夏のボーナスは全体でみると順調な増加が見込まれるが、業種ごとの明暗がくっきりと分かれる結果となるだろう。
丸山健太