夏のボーナス「伸びる業種、伸びない業種」統計データから分析してみた結果
好調さの目立つ「業務用機械」や「輸送用機械」(自動車)
特に好調さが目立つのは、「業務用機械」や「輸送用機械」(自動車)といった製造業・加工業種だ。 これらの業種は、大企業を中心に輸出比率が比較的高い。そのため、いわゆる「コロナショック」からの回復が早かったアメリカなどの需要をうまく取り込めた。また、円安の恩恵も受け、好業績を実現できたとみられる。 また、企業の設備投資意欲がこのところ旺盛であることも、一部の業種の追い風になっている。具体的には、オフィス機器やレジスターなど(業務用機械)、半導体製造装置や産業用ロボットなど(生産用機械)、また、商用車も扱う輸送用機械なども、こうした投資意欲の好影響を受けることになる。 日銀短観の設備投資計画をみると、2023年度に前年比11.5%増と高い伸びを記録した翌年にもかかわらず、2024年度も同4.0%増と現時点としては高い伸びが計画されている。コロナの大流行が去った後の経済活動の回復のほか、脱炭素対応のための新規投資や人手不足に対応するための省力化投資などへの需要の高まりが背景にあり、設備投資関連の需要は当面根強いとみられる。
製造業で収益改善が進んだ「鉄鋼」。その背景
製造業では、鉄鋼も業績が改善している。中国の過剰生産問題を背景に鋼材市況は軟化が続くうえ、鉄鉱石など原材料価格の高騰と円安の進行によりコスト負担が増す中でも、高炉休止などのリストラを進めたことで収益構造が改善している。 代表的な鉄鋼メーカーである高炉3社の2023年度の業績をみると、JFEスチールと神戸製鋼所は増益となり、日本製鉄は連結事業利益こそ減少したものの、在庫評価差等を除いた実力ベースの連結事業利益では過去最高益を更新した。
回復が遅れる非製造業でも「業績堅調」な業種
非製造業は、製造業と比較して業績の回復がやや遅れてはいるものの、卸売や小売などの業種では業績が比較的堅調で、ボーナスの大幅増が期待できる。 特に、「卸売業」は海外事業を手掛ける総合商社など大企業を中心に、円安などにより好業績が続いている。卸売業の経常利益は、コロナ禍で全世界的に物流がストップしたことから、2020年度に1.4兆円の赤字に陥ったものの、22年度以降、順調に回復し、23年度には19年度比+196%となった。 同時に、企業の人手不足感もかなり強く(図表2)、利益が増加する中、社員に利益を十分還元することで、優秀な人材を確保しようという動きもみられる。 日本経済新聞社がまとめた2024年夏のボーナス調査(中間集計)によると、三菱商事の平均支給額は641万8800円と調査対象のうち最高額を記録している。サンプルが大企業に偏っている点には注意が必要なものの、商社は全体よりもボーナスの伸びが大きい。 また、建設業は業績改善に遅れがみられるものの、人手不足感が強く、ボーナスは大きめの増加が予想される。労働者の絶対数が少ないだけでなく、就業者の高齢化が進んでおり、若い世代の新規就労者を集めることが急務となっている。 同時に、2024年4月から建設業にも「時間外労働の上限規制」が適用されることとなり(2024年問題)、これまで以上に多くの就業者が必要となることから、企業にはボーナスを積極的に引き上げる「動機」がある。 加えて、自己資本比率が2023年末には2019年末から3.4%ポイント上昇し、ストック面からみて経営の安定性が確保できていることから、業績の改善が遅れる中にあっても、多少の無理をしてでもボーナスを引き上げることが可能な状況にある。