「300人の大行列」「万代・ライフに宣戦布告?」 大阪初進出で話題のオーケー。その魅力と、現地を歩いた私が抱いた“一抹の不安”
その際の総司令部として、スーパーがひしめく高井田で各社の動向を把握し、今後の関西出店の戦略を立てていくのではないだろうか。「高井田戦争」は、「スーパー関西の乱」の前哨戦でもあるのだ。 特に、先ほども述べたが、対「万代」戦では、EDLPを掲げるオーケーと、「特売」で仕掛ける万代の安売り対決が展開され、どちらの方法が顧客に支持されるのか、という意味でも熾烈な戦いが予想される。 その際の戦略も、この高井田での実践経験を基に戦略が組み立てられていくのだろう。いずれにしても、関西での成否を決定する重要な本部が、高井田にある。その意味でも、今後はじまる「スーパー関西の乱」のはじまりを告げる出店でもあるわけだ。
オーケーは近年、新しいタイプの出店場所に積極的な攻勢を仕掛けている。 2023年には銀座店をオープン。それまでは郊外を中心とした出店を行ってきただけに、この展開は驚きを持って受け止められた。その銀座店はきわめて好調で、先日私が訪れたときも多くの人でにぎわっていた。 特に周辺のオフィスに勤務するサラリーマンやOLのランチ需要、またインバウンド観光客向けの商品も展開しているため、それらの需要に応えている。
安売りスーパーの銀座出店は一見、突拍子もなく思えるが、オーケーのブランドを全国に知らしめる、という意味では明確な意図があったし、その名前は十分全国に知れ渡っただろう。 今回の関西出店にあたっても出店意図は明確で、とにかく「今後、関西でバチバチやっていきまっせ」というメッセージが、さまざまなところから伝わってくる。 その背景には苦い関西進出失敗の思い出がチラつくが、それをバネに、怒涛の勢いで関西に殴り込みをかけるのだ。私たちはいま、関西のスーパー勢力図が変わる、その1ページ目を目の当たりにしているのかもしれない。
■そんななか、筆者が抱いた“一抹の不安”とは? ちなみにだが、筆者の不安を最後に述べておくと、オーケーの成否は前述したEDLPという仕組みが、大阪の人たちに支持されるか、という部分にある気がしている。 オーケーを愛用している人たちは「オーケーに行けば、買い物総額が一番安くなる」と考えているが、これは特売スーパーが少なくなった地域の話であり、品物単位で見ると、もちろん特売スーパーのほうが安い。 また、特売というのは一種のイベントであり、その「空間」に行くことの楽しさもある。安いことは大阪の人々にとってももちろん魅力的だろうが、「それだけで攻略できるほど、甘くない」のもまた事実だろう。
オーケーVS万代の天下分け目の戦いは、こういったさまざまな観点から、語りうる出来事なのだ。
谷頭 和希 :都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家