Jリーグ・優勝争いで生まれた“オフサイド疑惑”が残したVAR運用への課題。求められる再発防止策とは?
誤審が認められた前例では再試合となるケースも
審判委員会とメディアの相互理解を深める場として設けられたレフェリーブリーフィングだが、今シーズンにおいては審判委員会側がレフェリーの誤審を認め、謝罪するケースが少なくなかった。 例えば神戸のMF齊藤未月が左膝に全治約1年の重傷を負った8月19日の柏レイソル戦を巡っては、齊藤と接触した柏のDFジエゴにレッドカードが提示されるべきだったという見解が示された。 浦和レッズのFWブライアン・リンセンが相手ペナルティーエリア内で、京都サンガF.C.のDF福田心之助に背後から倒されながら、そのまま流された9月15日の一戦を巡ってもファウルと断定。さらに状況的にはVARが介入して、その上で主審が判断すべき事象だったと結論づけた。 2月下旬には緊急のブリーフィングが開催され、サンフレッチェ広島と北海道コンサドーレ札幌が引き分けた開幕戦で、広島のゴールとされるべき場面が見逃されたと認めている。審判委員会の扇谷健司委員長は「あってはならないもの」と厳しい言葉を介して誤審を謝罪している。 優勝争いと得点王争いに直結する浦和-神戸の判定も、影響力の大きさを踏まえれば緊急ブリーフィングを開催してもおかしくない事象だった。実際、日本代表戦が開催される国際Aマッチデー期間が設けられていた関係で、第32節から第33節までは約2週間と時間も空いていた。 ここからは推測となるが、緊急ブリーフィングを開催して誤審があったと認めればネット上の騒動はさらに拡大。ポジショニングを誤った副審が、誹謗中傷の標的になる事態が生じたおそれがある。 さらに誤審にとどまらず、家本氏が指摘したように「適切な競技規則が適用されなかった」と判断されれば、後半アディショナルタイムの同じ場面から再試合をすべきだという声も高まってくる。 J2では昨年8月、モンテディオ山形-ファジアーノ岡山が前半11分から再試合の形で実施された。 両チームが同4月に対戦した際の前半11分に、山形のバックパスのコースがずれ、ゴールマウスに向かっていったところを山形のキーパーが何とか阻止した。しかし、バックパスを手で扱ったとして岡山に間接フリーキックが与えられ、さらに山形のキーパーには一発退場が宣告されていた。 試合そのものは岡山が勝利した。しかし、競技規則には当該シーンにおいて「間接フリーキックは与えられても、キーパーには懲戒の罰則は与えられない」と明記されている。主審が競技規則を誤って適用したとして、異例のケースとして試合途中の同じ場面から再開されていた。 今回も競技規則が誤って適用されていたかどうかが協議され、再試合の対象になると判断されれば、シーズンが大詰めを迎えたなかで日程調整も含めて大混乱が生じる。あくまでもうがった見方になるが、シーズンが終了した後も具体的なアナウンスがなく、レフェリーブリーフィングでも質問されるまで言及しなかった経緯は、誤審を正面から受け止めてきたこれまでとは明らかに異なっていた。