韓ドラのプロが厳選! のめり込見必至の韓ドラサスペンスBEST3
殺人者のパラドックス(2024)
何の取り柄も人生の展望もなんもない学生が、ひょんなことから「殺されても仕方ない悪人」を本能的に嗅ぎ分ける自分の才能に気づき、ダークヒーローになっていくまでを描くスリラー。『ソジンの家』とかでチェ・ウシクを見ると、頭の回転が良くて茶目っ気たっぷり、ゆるくてテキトーだけど憎めない、って感じで、個人的には「おさるのジョージ」を思い出しちゃう私なんですけど、ええもちろんこのドラマでも最初はそんな感じなんですけど、最終話ではもう全く違う人物になっちゃっていて、なんつうか俳優チェ・ウシクの凄みを感じさせる作品です!
ウシクは大学卒業間近なのに就職見込みも金もなく、俺の人生スペクタクルがねえな~、英語喋れないけどカナダでワーホリでもすっかな~、とか漠然と思ってる典型的なふらふら大学生なんですけど、これがコンビニバイトの帰りに誤ってオッサンを殺しちゃうんですね。でもどういうわけか状況に助けられ、さらに被害者自身が殺人の手配犯だったために、ウシクとは無関係な事件として処理されちゃう。ところが目撃者がいたんですね~。窮地に陥ったウシクは、今度はやや意思を持ってこの人を殺しちゃうんですがーー以下同文。あれ、オレ捕まらないんでは?と思ったところに、その全てを知ったヒーローオタク、キム・ヨハン(『軍検事ドーベルマン』)が現れ、「一緒に、ワルを成敗しよう」と持ちかけます。やがてウシクは一端の殺し屋になってゆくのです~~。
そんなウシクに、二人の「ヤバい男」が関わってきます。ひとりは最初からウシクを「なんか怪しい」と睨んでマークしている刑事ソン・ソック(『私の解放日誌』)。ソックちゃんはヨハンとのつながりで「ウシクは殺し屋」と確信するんですが、というのも少し前にソックちゃんが追っていた殺し屋がやっぱりヨハンと繋がっていたんですね。それがもうひとりの「ヤバい男」殺し屋イ・ヒジュン(『マウス~ある殺人者の系譜~』)です。かつて警官だったヒジュンは、悪を憎むあまりダークサイドに落ちた男なんですけど、ソックちゃんもソックちゃんでこじらせた過去があり、ヒジュンを捕まえたら殺しちゃいそうな制御不能の憎しみを抱いているんですね。みんなどこかで「悪党を殺すのは正義」と思いつつ「悪党だからって殺していいのか」とも思ってる、つまりこれぞ「(正義の)殺人者の(抱える)パラドックス」なわけです!