韓ドラのプロが厳選! のめり込見必至の韓ドラサスペンスBEST3
ドラマの見どころは、私が愛するコ・ミンシの邪悪ぶりと凶暴ぶりです。ハイクラスのビッチ風ファッションで、ド派手スポーツカーをとっかえひっかえし、別荘のプールサイドでくつろぐ用の水着を一体何枚持ってきてんだよ!って感じのミンシは、観葉植物死ぬほど買って別荘内をジャングルにしちゃうわ(これはいいけども!)、飾ってた絵はバッキバキに破っちゃうわ、別荘の外壁を好き放題に色塗っちゃうわ、詳細はドラマ見てもらうといいけども、男連れ込むわ、飛びかかるわ、刺すわ、殴るわ、火つけるわ、車で突っ込むわ、こんな粘着アクション系悪党に弱み握られたらもう発狂するしかないっつうタイプなんですね。
そんな中、現れた救世主が凄腕警察官イ・ジョンウン(『Missデイ&Missナイト』)です。新人時代にこの地で経験した「最初の殺人事件」で刑事の天性を目覚めさせた彼女は、「鬼」とあだ名される動物的嗅覚でミンシに静かにじわじわと迫ってゆきます。一見普通のおばさんなのに目の奥が笑ってなくて、視線の端で常に僅かな不審を捕らえている、その冷徹なかっこよさったらあなた!!
ドラマではユンソク事件と並行して、このジョンウンの「最初の殺人事件」を描いてゆきます。それはある連続殺人鬼が湖畔のモーテルで起こした殺人事件なんですが、ある意味ではモーテルの主人ユン・ゲサン(『誘拐の日』)の人の良さが招き入れてしまった事件で、それゆえに彼の家族と人生はめちゃくちゃになっちゃってるんですね。ゲサンはそんな自分を「石にぶつかり道端で瀕死になりながら、”誰のせいで?なぜ自分が?”と考えているだけのカエル」に例えるんですが、これが時を超えてユンソクの事件と交錯し、ことを動かしてゆきます。
さてこのドラマのタイトルは「誰もいない森の奥で木が倒れたら音はするのか?」という、よく言われる量子学的な哲学問答なんですけど、「森の奥で木が倒れたとして、その音を誰も聞いていなければ、音はしていない(も同然)」、つまり「人間が知覚していないものは存在しない」というような意味合いで、このドラマ的に言えば「死体もないし、殺された人の悲鳴も誰も聞いていないなら、人は殺されていない」ってこと。いやでも実際は殺されてるし、起こってないことにして平穏に暮らすことなんてできっこねえよ、っつう話なんですね。この哲学はイ・チャンドンが『バーニング』として映画化した短編小説『納屋を焼く』に通じるんですけど、これ村上春樹の最高傑作(※個人の主観です)でめっちゃ面白いんで、ご興味ある方は読んでみてね! ※Netflixで独占配信中。