美しき稀少な初夏の花を訪ねて! 丹波篠山「多紀アルプス」登山ルポ
多紀アルプスの小金ヶ嶽と御嶽縦走登山の後編は、御嶽の山頂から大岳寺(みたけじ)跡、そしてクリンソウ自生地を目指すパートです。御嶽の山頂も岩場で、石で囲まれた祠があります。中に祀られているのは、役行者のようでした。 【写真】小金ヶ嶽と御嶽縦走登山で出会う花たちを愛でる(全8枚)
〝つわものどもが夢の跡〟は今……
山頂から南へ伸びる尾根を下っていきます。なかなか急なところもありますが、石仏があったり、景色が見えたり、いろいろと楽しめるルート。 大岳寺跡は、七合目あたりになるのですが、最盛期には塔頭(たっちゅう)が11もあったとか。かつて建物があったのではと思われる平坦地がところどころに出てきます。寺跡付近に解説看板が立てられていましたが、丹波修験道の中心であったこのお寺は、吉野の大峰山に対して「新金峯山大峯山」と称して対抗。隆盛を極め、一時は吉野より栄えていたほどだったのだとか。 しかし、本山の大峰から登山の督促があったのに応じなかったため、怒った大峰山が僧兵300人を遣わし、攻め滅ぼされてしまったそうです。僧兵おそるべし。 そして、かつてたくさんの塔頭が建ち並んでいたかもしれないあたりには、今は何の痕跡も見当たらず、静まり返る中に初夏の名花がひっそりと咲いていました。
可憐なクリンソウ、さらに稀少な花も……
クリンソウは、自治体によっては絶滅危惧種に指定されています。地元兵庫県版レッドデータブックでは、絶滅の危機に瀕し、厳重な保全対策が必要とされるBランクに指定されています。サクラソウ科の多年草で、花が何段にも咲く姿をお寺の塔の「九輪」に見立てた名前がつけられています。 鮮やかなピンク色が新緑の森の中でとても映えます。自生地では、歩いてもいい場所がロープで仕切られていて、群生しているエリアには近寄ることができないのですが、たまたま登山道の近くにもいくつかの株が生えていました。 ここの自生地は、国内でも有数の規模なのだとか。地元ボランティアのみなさんが保全活動に取り組んでおられるそうです。兵庫県版レッドデータブックでは「絶滅の危険が増大している」とされるBランク指定。踏み荒らされたり、盗掘されることのないよう、大切に見守っていきたいものです。 さて、お目当ての花にも出会えたし、下山することに。 携帯圏外だということもあるのですが、帰りは交通費節約のため、篠山の中心エリアまで歩くことにします。火打岩側ではなく、少しでも篠山の中心地に近い側へ降りた方が楽かなと思って、あまり一般的ではなさそうな踏み跡を下ってみることにしました。 そしたら、なんと! 想定外のお花に出会えました! ラン科の多年草「ギンラン」です。あまり多くの人が歩いていなさそうな踏み跡とはいえ、道の真ん中で咲いててびっくり。そんなところで生えてたら踏まれるよ! 里山を象徴する花のひとつですが、近年見ることがかなり少なくなっているので、出会えるととてもうれしい花の一つなんです。人の少ないマイナーコースを歩いてみるのも、よいことがあるなぁと思いました。ほかにも、清楚な白が印象的な「オオカメノキ」も咲いていました。 美しき初夏の花々に出会えて大満足の山行となりました。帰り道、車道歩きがあまりに長くて疲れたので、ちょこっと寄り道をして、おやつタイム。焼き立てスフレが人気の名物カフェ「Café Kamotte(カフェ カモット)」で、熱々のオレンジスフレとコーヒーで一服。 がんばってタクシー代を節約したのに、結局おやつで出費。ナニをしてるんだか……。けど、山歩きのあとのご褒美スイーツは〝お約束〟ですよね。
根岸真理