「貴婦人」世代を超え人気 SLばんえつ物語25年
【汐留鉄道倶楽部】蒸気機関車(SL)が客車7両をけん引し、磐越西線(新潟県、福島県)を走る快速「SLばんえつ物語」が今年、運行開始25年を迎えた。機関車Ⅽ57型180号機の前面に赤地に金色の「25」をあしらったヘッドマークを付け、今年は12月まで運行する。25周年特別企画として、前面ナンバープレート下にあるハンドルなどの装飾塗装も金から黒に変更し「往年の雰囲気を演出」(JR東日本新潟支社)した。夏のある朝、始発駅新津(新潟市秋葉区)で会津若松(福島県会津若松市)行き上り列車を見送った。 【写真】<あのころ>ばんえつ物語号、出発進行 高倉健さんがテープカット
長野方面と新潟を結ぶ信越線の途中駅・新津は、磐越西線や秋田方面を日本海回りで結ぶ羽越線の起点で、車庫や車両工場もある鉄道の要衝。ばんえつ物語の機関車と客車の拠点でもある。列車が入線すると、幼い子供を連れた親から熟年世代などさまざまな人々が主に機関車に集まり、ヘッドマークや運転席などを撮影。JR社員が機関車をバックにシャッターを押してくれるサービスもある。先頭客車の展望室で、機関車後部のナンバープレートをバックに記念撮影する乗客も。列車は午前10時3分、「ボーッ」という大きな汽笛を鳴らし、111㌔、約3時間半の旅に出た。 1999年4月に運行を開始した。日本の復活SL運行では乗車時間、距離が最も長い。SL単独での7両けん引も他にはない。12系客車は内外装が変更され、現在は外観が茶系統のツートンカラーに、内装もレトロ調に。走行区間の大半が非電化で架線がなく、昔の雰囲気を残している。編成にも子どもの遊び場と展望室を持つ車両、イベントスペース付き中間展望車が組み込まれるなど、幼児も飽きないよう工夫されている。全席指定で大人料金は普通車840円(運賃は別)。専用展望室付きグリーン車(30席)は2千円で人気だが、窓が開かないため、窓を開け風に当たりながら煙のにおいをかげる普通車にも楽しみがある。
2002年から16年間は新潟発着で運行していた。駅高架化による勾配を理由に短縮となったが、当時も新津を拠点とする回送は電気機関車が担当していたので、往路だけでも新潟始発が復活できないかと思うことはある。一方で新津発着による発見もあった。例えば旅の友、駅弁。新津駅前「神尾弁当」を訪ねると、駅売りのない商品がある。「数の子ずし」「さけずし」などは半分に割った竹を模した容器に盛り付けられ、気分を盛り上げてくれる。コメどころらしく駅弁はどれもおいしい。新津鉄道資料館、独特の石油臭が特徴の「新津温泉」も穴場スポットだ。 阿賀野川を左に右に鉄橋を渡りながら臨む車窓だけでも飽きないが、非売品グッズが景品の車内じゃんけん大会もあり、道中の物品販売も多彩。特に往復とも長時間停車する津川(新潟県阿賀町)では復刻駅弁「とりめし」が限定販売され、到着とともに乗客がダッシュして買い求める。かつて2駅東の日出谷で販売され、あっという間に売り切れていた「幻の駅弁」を復刻したもので、鶏肉そぼろといり卵がメインの素朴な味だ。帰路の下りでは野沢(福島県西会津町)で「宿場の釜飯 野澤宿めし」もある。プラスチック容器だが地元の食材を使用し駅弁としても求めやすい価格で、ぜひご賞味いただきたい。