子どもが集めた空き缶で 福岡市の樋井川に架かるカンカン橋
福岡市を流れる樋井川にかかる金桜橋(きんおうはし)には、膝の高さほどの空き缶のオブジェが八つ並んでいる。調べてみると、全国で初めて空き缶をリサイクルして造られた橋で、地元では「カンカン橋」とも呼ばれているらしい。この橋が誕生した経緯を探ってきた。 【写真】空き缶をリサイクルした金桜橋
7000人が1年かけて
油山を源流として、博多湾へと注ぐ樋井川。福岡市の城南区と中央区にまたがる金桜橋は1998年に架け替えられ、長さ34メートルの橋げたの内部には14万個あまりの空き缶が敷き詰められている。
鋼板を組み合わせた橋の隙間部分に埋められたのがスチール製の空き缶だ。25個を1組に束ね、4、5段に積み重ねたものを、発泡ウレタンでくるんで詰め込んだ。コンクリートに比べて重量が約半分に抑えられ、橋が揺れにくい構造になると、当時の新聞が伝えている。
4年にわたって橋の施工に携わり、現在は東区役所に勤める高田信次さん(58)に話を聞いた。空き缶の収集は30年近く前、城南区内11の小学校に依頼した。約7000人の児童が1年ほどかけて、14万3750個の空き缶を持ち寄ってくれたという。
「提案を受けたすべての小学校が快諾してくれました」と高田さん。当時の紙面には、児童が集めた空き缶の束が、うずたかく積まれている写真が掲載されていた。
みんなでリサイクル
高田さんによると、橋げたの中には通常、コンクリートや発泡ウレタンを入れるが、一部を空き缶で代用することにより、経費削減にもつながったという。さらに、空き缶が衝撃を吸収して騒音を抑えるといった効果も期待されたようだ。
プロジェクトが進められた背景には、経費削減や騒音対策以上に、地球環境を守って、資源の大切さやリサイクルのことを考える子どもたちを育てたいとの思いがあった。「環境保全への意識が今ほど高くなかった時代に、地域の人たちとリサイクル活動に取り組み、橋の完成までかかわれたことは私の財産」と高田さんは振り返る。
金桜橋のたもとには、ひときわ大きな空き缶のオブジェが置かれ、架け替えの経緯を伝えている。実はこのオブジェ、空き缶集めに参加した児童たちの文集やメッセージを入れたタイムカプセルなのだという。 橋のそばには商業施設「イオンスタイル笹丘」があり、人通りは多い。道行く人に声をかけてみたが、建設からすでに四半世紀がたっているからだろうか、そうした経緯を知る人には出会えなかった。