「政府」ってそもそも何? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
通常国会があす24日に開会します。政府は2014年度の予算案や2013年度の補正予算案のほか、成長戦略に関する法案などを提出する見込みです。このように、ニュースで「政府は」という主語をよく聞いたり読んだりします。しかしよく考えてみると「政府」という個人がいるわけでもなく、では何の団体かというとよくわかりません。この「正体」を分析しましょう。
「行政」「省」「国務大臣」
「政府」とはgovernmentの和訳。日本の仕組みは学校で習ったように三権、つまり司法・立法・行政にわかれています。「government」は三権すべてですが日本では慣例として「行政」を意味する言葉となっています。 この「行政」というのも難しいですね。国家権力の行使から「法律を作る」(立法)と裁判(司法)を引いたほぼすべてを示す言葉といえば少しは理解できるでしょうか。公によるサービスがだいたい適用されます。学校を造ったり、道路を敷いたり、年金をもらったり、などなど。なかには「税を徴収する」という「痛い」サービスも含まれます。 ではこれらすべてが「政府」かというと少々異なります。大きく国と地方自治体(都道府県や市町村)に分けて前者のみに使うのが通例です。では「国」の行政とは何かというと「省」を主に指すと考えていいでしょう。「省」のトップは内閣総理大臣(首相)が任命する「国務大臣」(閣僚)が務めるので、行政のてっぺんは首相をトップとする国務大臣の集団となります。「内閣」と呼びます。 なので「政府」とは「内閣」であり、構成員は首相と「国務大臣」で、大方の国務大臣は「省」のトップである、とまず理解してみて下さい。 その上で次の例外を覚えます。国務大臣には「省」の長以外に「内閣府」(首相直属の「省」のようなもの)に置かれた特命担当大臣と警察を所管する国家公安委員会委員長、後述する内閣官房長官が加わるのです。
「首相」と「官房長官」
さて「内閣」が「政府」だとして「政府」の発言とは誰がしているのでしょうか。真っ先に思い浮かぶのは首相です。しかし首相発言を「政府は」とあえてぼかして表現しません。今ならば「安倍晋三首相は」と明記します。 そもそも首相が「政府」だとしたら毎日報道されるあふれるばかりの「政府」はみんな首相がしゃべりまくっているってことになります。それは無理。では「国務大臣」かというと結局首相と同じで例えば「文部科学大臣は」との主語で表現されます。 一番「政府は」で語られるのは内閣官房長官(国務大臣)です。大臣なので内閣の一員であると同時に省に仕える公務員の総まとめ役でもあります。「官房」とは省を会社に例えたら「総務部」に当たり人事や文書、会計などの仕事をしています。そうしたすべてを統べるのが官房長官となります。 と同時に毎週火曜と金曜は内閣の決まり事などについて定例の記者会見を開くほか、必要があれば毎日でも会見を行います。いわば内閣の広報担当。ゆえに「政府は」の主語に一番なりやすいのです。 最近はあまり使われなくなったものの時折見られる「政府首脳」というのも官房長官。記者団などに「オフレコ」(報道しない)を前提に語った内容を主語をぼかして伝えたい場面で用いるのです。