チャールズ国王の治世になって変わったこと、変わらなかったこと
王室はこの件をうやむやにすることなく厳しく対処。レディ・ハッセーはウィリアム皇太子のゴッドマザーも務め、近年は宮殿でのイベント開催などにも携わってきた重要人物。新治世でも国王の側近を務めると見られていた。しかしこの発言で辞職、謝罪声明を発表した。王室もレディ・ハッセー(写真左)の発言について「まったく受け入れ難いもので、とても残念」とコメントを発表、ウィリアム皇太子のスポークスパーソンも「我々の社会に人種差別が存在する余地はない」と批判した。この素早い反応に、地味ではあるが新治世の変化が現れていると放送局「BBC」のロイヤルレポーター、ショーン・コクランは分析している。 (とはいえレディ・ハッセーは王室を出禁になったわけではない。ロイヤルアスコットには出席、国王や王妃と歓談していた)
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前出のカウル教授もこの対応を「74歳の経験豊かなロイヤルにふさわしい、かすかではあるが意味ある変化の現れ」とカナダの放送局「CBC」に語っている。「21世紀の世界では生産性の高さと人気がすべて。迅速に動くことで、王室はこれらを実現しようとしている」。
自らメッセージを発信する姿勢を強調
人気獲得にはもう1つの変化が貢献している。それは公務や礼拝などの後、周辺に集まった人と言葉を交わすこと。もちろん女王も集まった人たちと握手をすることがあったが、女王と国王の態度は目に見えて異なるとマンチェスター・メトロポリタン大学で王室史を研究するジョナサン・スパングラー博士は指摘する。年齢的なものもあるだろうが「国王にはよそよそしさがない」というのが博士の意見。「国王は国民と関係を築くのが上手になった」「人々と話すことで国王は自分のアイディアを伝えている」とも。国王がここでコメントしたことは報道陣に伝わり、紙面や画面を通じて大きく報じられる。すると国王の考えが王室の声明などより、身近な言葉で国民に伝わることになる。
これまで王室にあまり魅力を感じていなかった人たちや若年層にこの態度はいい効果を及ぼしていると見るのが前出のホワイトロック教授。「女王は公の場所で意見を言わないことで称賛されていた。でも今の若い人たちは『プラットフォームがあるのなら使うべき』と考える」。だから小さなチャンスを使って意見やメッセージを発信していくという国王の態度は、若者たちからの支持率アップに効果があるというのがホワイトロック教授の見方。