新クルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」就航 激化する「富裕層の獲得競争」
商船三井クルーズが12月、新しいクルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」(三井オーシャンフジ)を就航させた。拡大しているクルーズ需要の中で、新たな客層を獲得しようとしている。12月7日に就航記念イベントに参加した商船三井クルーズの向井恒道社長は「40歳から50歳くらいの働き盛りの世代にも、このクルーズ船に乗ってもらいたい」と述べ、これまで乗船していなかった年齢層にもクルーズ旅を経験してもらいたい考えを明らかにした。 【写真を見る】三井オーシャンスイート
日本郵船、ディズニー、ジャパネット、ピースボート 競争は激化
この日にお披露目したのは、全室で海が望めるスイートルームという快適な船旅が体験できるクルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」(3万2477トン、客室数229室)で、クルーズ船としては中型クラス。2009年に就航した船を改装して、12月から「MITSUI OCEAN FUJI」として運航する。主に日本の港と、香港、シンガポール、ベトナム、タイなどアジアの近隣諸国を中心に回るクルーズ旅を予定しているという。直近の予約はほぼ満室だといい、順調な船出となったようだ。
にっぽん丸と2隻体制ですみ分け
一方、現在運航中の同社のクルーズ船「にっぽん丸」(1990年就航、2万2472トン、190室)は、日本の港を中心にクルーズさせる計画で、当面はこの2隻体制でクルーズ先をすみ分けした形にする。世界一周のクルーズは、スエズ運河通行の安全性が確保されていないこともあって、当面は計画をしていないという。 このほか、同社ではクルーズ船を新造船で2隻造る計画もあるが、今のところ具体化はしていない。今後のクルーズ需要と乗客数の伸びなどをもとに、造船するかどうかを判断することになりそうだ。
新しい顧客層の獲得へ
向井社長は「週末を挟んで5~6泊の期間で乗船できるようにプロダクトも工夫している」と話す。これまで乗船できなかった新しい顧客層の獲得に意欲を見せた。現在、にっぽん丸の年間の乗客数は2.5万から3万人で、定員数の一回り大きな「MITSUI OCEAN FUJI」が就航したことで、大幅な乗客数の増加を期待している。 この船の仕様をみると、豪華な設備を整えており、レストランでは有名シェフの料理が堪能できるなど、随所にこの船ならではのこだわりがある。 世界的にはクルーズ船の大型化が強まる中にあって「MITSUI OCEAN FUJI」という比較的小さなクルーズ船を運航することにより、大型船が入港できなかったアジアの寄港地にも立ち寄り、乗客に新鮮な観光体験を提供したいとしている。 ちなみに料金は、12月8日から横浜発着で新宮、高知、釜山を回る6日間クルーズで、41万1000円から161万2000円。2025年4月の横浜発着で済州島、博多、宿毛を8日間で回るのが57万7000円から226万3000円。5月に66日間かけてベトナム、シンガポール、プーケット、バリ島、高雄などを66日間かけて回るグランドアジアクルーズは、470万円から2000万円。 料金的には高めに設定しており、プレミアムな旅を満喫してもらおうと、内外の富裕層の乗客を取り込もうとしている。同じ層を狙っているのが、日本郵船系列で、現在、世界一周クルーズも含めて運航している「飛鳥II」を保有している郵船クルーズ。同社は2025年には新造船の「飛鳥III」を就航させる予定で、郵船クルーズと商船三井クルーズの両社、クルーズ船4隻による富裕層獲得の競争が激化しそうだ。