不思議博物館分室へようこそ ありえない昭和の写真を展示中/福岡市・天神
過去にひょっとすると、日本のどこかに存在した建物なのではないだろうか――。そう思ってしまうほど絶妙なリアリティー。架空の建造物が周囲に溶け込んだ写真の前に立つと、空想と現実が入り交じった”ふしぎワールド”に引き込まれてしまう。 「この物件ならペットOKだろうな」などと考えながら、高い完成度の作品を隅々まで眺めていると、つい顔がほころんでしまう。店では展示作品の人気投票を行っており、じっと見入ってしまった犬の形の巨大マンションに一票を投じた。
角さんは今回の写真展に合わせ、ミニフィギュア50個をつくった。「数十万円かかり、明らかに採算割れだけど、どうしてもつくりたかった」という。思い入れのある写真展のために用意した労作だが、「残念ながら、期待の10分の1の反応」と笑う。
取材を終えて店を出るとき、店長が「お大事に」とやさしい笑顔で扉まで見送ってくれた。そうか、ここはサナトリウムという設定だった。何時間か前の違和感はすっかり消え、楽しいアートを堪能できた心地よさを感じながら階段を下りた。
読売新聞