【ソーシャル・イノベーション 日本財団の挑戦】 (129)海洋事業部海洋船舶チーム 古谷悠真。海上輸送による被災地支援、RORO船で直接物資輸送
1月1日に発生した能登半島地震では、道路の陥没や法面の崩壊が多発し、通行可能な道路であっても慢性的に渋滞が発生するなど、道路インフラへのダメージが救助・支援・復旧の大きな障害となった。そこで日本財団では被災地に直接物資を輸送するため、RORO船を利用した海上輸送による支援を計画、発災後約1カ月間にわたって実施した。 このプロジェクトは石川県の金沢港と富山県の伏木富山港を拠点とし、これらの港から石川県の輪島港(輪島市)・飯田港(珠洲市)に対し支援物資の輸送を行うもので、和幸船舶所有のRORO船「フェリー粟国(あぐに)」を使用した。 同船は2020年まで沖縄県の那覇港と粟国港の間の定期フェリーとして運航されていたものであり、総トン数は462トンとRORO貨物船としては小型の船である。喫水が比較的小さいため、水深が浅い場所もある被災地の港への入港に適しているほか、RORO船であるため、支援物資をトラックごと輸送し、港から直接避難所などへ搬入することが可能だった。 また、トラックドライバーや発電機設置などに必要な技術者も日本財団で手配・派遣するなど、被災地の物的・人的リソースを要さない、高い自己完結性をもった輸送を実施できた。 第1便は1月10日に金沢港から出発し輪島港に入港、避難所となっていた特別養護老人ホームなどに発電機や燃料を輸送し、当日中に金沢港に帰着した。その後も物資輸送を継続し、約1カ月のプロジェクト期間中に合計8回の輸送を行った。道路の復旧などから、2月7日の金沢港から輪島港への航海をもってプロジェクトは終了した。 これらの航海で輸送した物資は発電機、燃料類、車両、シャワー装置、手洗い装置などで、被災自治体などと連携の上でニーズを調査し調達したものである。特に燃料類は、暖房や支援用重機の燃料などとしてニーズが高い品目だった。 シャワー装置や手洗い装置はWOTA(ウオータ、東京都中央区)が開発したもので、使用した水の98%以上を再生・循環利用することにより、水道インフラがなくても継続してシャワーなどが利用できるものである。企業などからの寄付を頂き搬送した物資もあった。