「政治とカネ」与野党攻防 衆院選公示、前首相の膝元 広島1区 けじめで退陣/徹底追及
自民党派閥の裏金事件が発覚してから初の衆院選が15日、幕を開けた。9月まで党を率い、首相を務めた自民党前職が11選を目指す広島1区には、野党3党が新人を擁立。初日から、与野党が「政治とカネ」の問題を巡り攻防を繰り広げた。 ⇒2024年衆議院選挙・広島1~6区の立候補者一覧の立候補者一覧はこちら 「党総裁としてけじめをつける思いで退陣を決断した」。自民党前職の岸田文雄氏(67)=公明推薦=は広島市中区での第一声で裏金事件に触れ、険しい表情を見せた。 地元での第一声は2014年以来10年ぶり。事件を踏まえ、比例代表中国ブロックへの重複立候補を辞退した。「信頼回復は甘いものではない。一つ一つ努力を積み重ねなければならない」と聴衆に理解を求めた。 裏金事件では自民党の旧安倍派と旧二階派が長年、パーティー券の販売ノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載せず、議員側に還流。党は4月に国会議員ら39人を処分し、衆院選で12人を非公認とした。 トップとしての責任を問われ続けた前首相・総裁の膝元で、野党は裏金事件の批判を連ねる。 立憲民主党新人の平本浩一氏(58)は中区での第一声で「自民党に一言申し上げる。公認を受けなかったのはたったの12人。全ての納税者の怒りを代弁し、この問題を徹底追及する」と自民党の対応を疑問視した。 旧民主党勢力としては12年以来、12年ぶりの擁立となる。長野市在住だが、あえて広島1区での挑戦を希望し「政権交代こそが最大の政治改革だ」と対決姿勢を示す。 裏金事件を受け、自民党が提出した改正政治資金規正法は6月に成立。ただ使途が不明で「ブラックボックス」とされる政策活動費については、使途の公開時期を「10年後に検討」とした。 この問題に切り込んだのは日本維新の会新人の山田肇氏(35)。「日本維新の会は話題の政策活動費の一切の廃止を掲げている」。広島県府中町での街頭演説で改革姿勢を前面に打ち出した。 これに先立つ東区での第一声では「政治とカネ問題が争点になるのは本当に恥ずかしい状況だ」と指摘。政治団体・大阪維新の会の大阪市議として行政改革に力を入れた経験をアピールした。 いったん止めた派閥の資金還流がなぜ復活し、裏金が何に使われたかは明らかになっていない。「まともな解明もできない自民党政治を終わらせよう」。共産党新人の中原剛氏(68)は中区での第一声で声を張り上げた。 共産党は企業・団体献金の禁止を主張し、税金が原資の政党交付金を受け取っていないと強調。「党の躍進が裏金政治・腐敗政治の一掃の確かな力となる」と力説した。 無所属新人の産原稔文氏(57)は中区での第一声で、選挙制度と裏金事件に関し「一般の人の感覚が全く政治に反映されていない」と唱えた。
中国新聞社