【独自】西日本豪雨後の改修工事で魚類減少、小田川の自然再生 国交省が着手へ 15年間かけ”すみか”を取り戻す
国土交通省岡山河川事務所(岡山市)は2025年度から、高梁川水系・小田川の自然再生事業に乗り出す。18年の西日本豪雨を受けた高梁川との合流点付け替え工事をはじめ治水目的の河道改修を重ねてきたことなどが影響し、生息する魚類が減少しているためだ。15年間をかけて河川敷に水のたまり場を造ったり、水路の保全に取り組んだりして魚類のすみかを取り戻す計画で、氾濫後の治水対策が一段落した小田川は、豊かな自然をたたえる環境づくりが焦点となる。 【イラスト】小田川の自然再生事業のイメージはこちら 倉敷市などの県西部を東西に流れる小田川は勾配が少ないため水が滞留しやすく、氾濫の危険が高いとされ、1960年代に一部区間が国管理となって以降、洪水を防ぐための河道改修が繰り返された。湿地だった河川敷の整備も進められ、大雨時にあふれた水を蓄える機能を持つ「氾濫原」が失われたという。 河川改修や開発に伴い魚類の生態にも変化が生じた。岡山河川事務所の生息調査によると、ドジョウやゼゼラ、ミナミメダカといった氾濫原をすみかとする希少種が減少傾向で、確認された魚類の個体数はピーク時の4割以下、魚種も半数程度に落ち込んでいる。 こうした状況を踏まえ、岡山河川事務所は生物多様性を維持する観点から氾濫原の再生が不可欠と判断。西日本豪雨後の治水対策を進めつつ、23年度に取りまとめた高梁川水系の自然再生計画に、今回の小田川の事業を盛り込んだ。 計画では、かつて氾濫原が存在していた南山橋(倉敷市)以西の約7キロ区間のうち、魚類の生息状況などを考慮して計約2キロ区間を対象に設定。河川敷を掘削して水がたまる場を設けることで、氾濫原の機能を再生させる。 堤防内側を流れる「堤外水路」にも着目。在来のタナゴの生育には水面が草に覆われた状態が望ましいとされる一方、豪雨からの復旧作業の一環で水路周辺の草が刈り取られており、同じく南山橋以西の約4・4キロ区間で除草や伐採を原則行わないこととする。 事業はいずれも39年度までの計画で、推定の事業費は計9億7800万円。11月上旬、岡山市内に有識者を集めた会合で計画を説明した。岡山河川事務所の垣原清次所長は「小田川はもともと自然豊かな河川。人工的に手を加える部分と環境を守る部分とのバランスを取りながら後世に残したい」と話している。