「ぼくのお日さま」奥山大史監督が語る、日本映画のこれからとは?
凍った池探しと、撮影の舞台裏
──シナハン(シナリオ・ハンティング=台本を書くための取材)の手応えと、撮影地に北海道の小樽や赤井川、余市などを選んだ経緯を教えてください。 「シナハンで場所が決まると、ストーリーがおのずと湧いてくるんです。たとえば、小樽から車で30分ほど走らせた隣町に行くと、山など景色が全然違う。それが面白いと思って、主人公・タクヤの住む町と、池松さん演じるコーチ・荒川や教え子の少女が住む町、二つの架空の町を、各地で撮った“ピース”を当てはめて作ることにしました。コーチや少女の町はタクヤの町からひと山越えた場所にあり、少し都会的な分、どこか冷たさもあるような描き方をしています」 ──特に、凍った池を探すロケハンが大変でしたね。 「『凍った湖の上でスケートを滑る』場面は、プロットの段階から思い描いていました。屋外リンクではなく、あくまで自然の中にある、先生にとって秘密の場所みたいイメージ。とはいえ、本当にこんな場所あるのかな、撮影は難しいだろうな…と考えていたのですが、書き進めていくうち、かなり大事なシーンになってきて、『これは何としても撮りたい!』と思いました」 「そこで、北海道の各地をとにかく何か所も見て回る中、あの場所にたどり着きました。苫小牧の私有地にあるのですが、サイズ感がちょうど良く、国道から近いことも撮影に適していました。ただ、問題は、凍った湖の上にも雪が積もるので、除雪が必要なこと。そこで、10年前、苫小牧の撮影でお世話になった地元の建設会社に相談に行ったところ、『やれることをやるよ』と、雪をどかしてくれました。除雪だけでは湖面はザラザラしていて滑れる状態ではないので、そこに水をまき、ちゃんとリンクも作ってもらったんです。完成シーンを見ると、自然に湖面が出ているように見えると思います」
「このシーンは周囲が360度映るので、カメラを持った僕もスケート靴をはき、自由に回しながら、まるでドキュメンタリーのように撮り続けました。撮影時のほとんどは、スタッフはみんな遠く離れたところに隠れてもらい、出演者3人と僕しかいない状況。自然の中で本当に遊んでいるという雰囲気で、とても楽しい撮影でした。たった3分間のシーンに3日間カメラを回し、いいところを切り貼りしたんです」