世界の高級・ユニークホテルが加盟する「ルレ・エ・シャトー」 高品質にお墨付きの秘密
■会員にも「不断の努力」求める
――審査は極めて厳格と聞いていますが、具体的なポイントは。 「とても厳しいですよ。ゲスト体験としての上質さはもちろんのこと、ルレ・エ・シャトーが掲げる哲学に共鳴しているかどうか、詳細に調べていきます。実例を挙げると、その土地の歴史や文化、食文化を体現しているか、環境などのサステナビリティーに配慮しているか、文化的な体験など他にはない魅力的な特徴があるか、レストランであればシェフの個性や独自性、献身性が感じられるか、などといった点です」 「いったん会員になっても、それが永久保証されるわけではありません。覆面調査は入会時だけでなく、加盟後も2～3年ごとに実施します」 「施設のゲストから寄せられたコメントやメール、書簡なども厳格に考慮されます。すべてのゲストは宿泊や食事の体験についてフィードバックできるので、それを非常に細かくチェックします。もしネガティブなものが来たら、ただちに加盟施設のクオリティー管理を担当する部門と共有し、当該施設に調査員を派遣します。一方、ポジティブなものが来たら、会員に還元します」 ――調査員のリポートの点数が悪い場合はどのように対応するのですか。 「評価の低い施設については、そのリポートがネットワークコミッションに上がり、当該施設は各支部から呼び出しを受けます。まず、そこで今後の改善策についてミーティングを開きます。そして1年以内に再び調査が入り、問題点が改善されていたら大丈夫。それでもだめだったらボードミーティングに上げて退会となります。毎年退会する15～20施設には、クオリティーの問題で辞めざるを得ないところもあれば、オーナーが代わり、考え方の相違で辞めるところもあります」
■継続的に改善支援 「会員と一緒に成長」目指す
――覆面調査といえば日本でも有名なミシュランがあります。ルレ・エ・シャトーはミシュランの格付けと比較して、どういう点が異なりますか。 「我々もガストロノミー（美食）の組織であるという点では共通しています。580の会員の中でミシュランの星を376保有しています。さらに300の会員がキッチンガーデンを持ち、100以上の会員が養蜂場を保有し、55の会員がワインをプロデュースしています。この点はユニークでしょう」 「ミシュランと何が違うのかといえば、ミシュランは施設が星を求めるかどうかにかかわらず星を与えるのに対し、ルレ・エ・シャトーは施設が自ら入りたいと希望し、審査を受けてから加盟するという点です」 「覆面審査も共通していますが、ミシュランは星を与えて終わりです。一方、我々は加盟した会員に60ほどのサービスやツールを提供しています。デジタルツールを使って送客する仕組みを整えたり、サステナビリティーの取り組みを支援したりするといった具合です。会員の間での人材交流も進めています。ルレ・エ・シャトーは言うなれば、世界最大のシェフの組織でもあります。各地域の支部にシェフの代表者を配置し、その代表シェフたちは年に1度、世界のいずれかの場所に集まり、ガストロノミーにおけるトレンド、課題、戦略などを話し合い、共有する場を設けています。これがワールド・カリナリー・カウンシル（世界食評議会）です」 「会員各社からは会費をいただいています。金額は施設の規模によって違い、30部屋から35部屋を持つホテルであれば年間の会費は2万～3万ユーロ（1ユーロ＝約172円、約344万～516万円）となります。その収入の多くは会員のコミュニケーションや提供ツールに使われています」 ――格付け、というよりも、会員と共に成長していくという方針なのですね。 「その通りです。お墨付きを与えるというよりは、ルレ・エ・シャトーのファミリーとして哲学や生き方を共有し、一緒に成長する、という理念です」
