世界の高級・ユニークホテルが加盟する「ルレ・エ・シャトー」 高品質にお墨付きの秘密
連載《とっておきの旅》ルレ・エ・シャトー おもてなしの哲学（下）
パリに本部を置き、世界の高級宿泊施設やレストランが加盟する非営利の会員組織、「ルレ・エ・シャトー」の存在感がにわかに高まっている。コロナ禍からの解放感に浸り、旅情に誘われるがまま意欲的に観光地を巡り始めた富裕層の多くは、もはやありきたりの旅では満足できない。そんな人々の心を捉えているのが、規模もスタイルも一様でない、ユニークで高品質なルレ・エ・シャトーの会員施設なのだ。 【世界のラグジュアリー】ナミビアとポルトガルの新メンバー、タイユヴァンやミラズールの魅惑の一皿をチェック！ 65の国と地域に点在する580の施設は、地域色豊かな「食」と「おもてなし」を提供する家族経営のホテルやレストラン。新規加盟の希望は毎年600件ほど舞い込むという。だが2024年に70周年を迎えたこの組織が何よりも重視する「クオリティー」の水準は高く、厳しい審査を経て選定されるのは15～20施設に過ぎない。 狭き門に加え、場合によっては会員資格の剥奪もある。時にミシュランの格付けと比較されるルレ・エ・シャトーの審査の裏側や、そのおもてなしの哲学について、2023年に会長に就任したローラン・ガルディニエさんに聞いた。
■600施設が入会希望、加盟5％未満 調査は「覆面」
――2024年3月、新たな会員として12のホテル・レストランが発表されました。ナミビアの「グムンドナー・ロッジ」は広大な砂漠と野生動物の生息地に隣接するしゃれたロッジ。ポルトガルの「ホテル・ヴェルメーリョ」は高級靴ブランド「クリスチャン・ルブタン」のオーナーが開業したスモールラグジュアリーホテルです。どの施設も大手ホテルとは異なる魅力にあふれています。 「最近は毎年600施設が新規加盟の選考対象となり、オファーの受付などには4つのチャネルがあります。1つ目は自薦でダイレクトな依頼です。2つ目は私どもからのアプローチ。3つ目は既存メンバーの2軒目、3軒目の施設。そして4つ目が既存のメンバーからの推薦です」 「そもそもルレ・エ・シャトーは1954年、南仏とパリを結ぶ国道沿いに点在していた8軒のオーベルジュ（宿泊施設を備えたレストラン）やレストランのオーナーたちが、エリアを結ぶ道を『ラ・ルート・デュ・ボヌール（幸福の道）』と呼び、お客様を相互に紹介し合う形で始まったものです。土地とのつながり、そこでしか体験できないことを大事にしている家族経営の施設で構成されています」 ――一貫したサービスを提供する大手チェーンとは違い、一つ一つの施設のブランドアイデンティティーを重視されているのは、そうした経緯があるからですね。では、600もある候補の中からどうやって絞り込んでいくのですか。 「アノニマスインスペクター（覆面調査員）が14人いて、実際にお客として宿泊したり食事をしたりしながら、500以上の項目に基づいて審査していきます。彼らのリポートが上がってきたら、ネットワークコミッションというルレ・エ・シャトーの審議にかけられます。加盟を認めましょうとなれば、さらに上部組織である理事会のボードミーティングにあげられ、そこで承認する仕組みです。最終的に選ばれるのは15～20くらい。そして、同じくらいの数の会員が毎年退会していきます」
