虎の穴(8月13日)
虎の穴―。人を鍛錬し、一人前に育てる場所を意味する。スポーツからビジネスまで分野を超えて使われる。昭和40年代に人気を集めた漫画「タイガーマスク」に登場するレスラー養成機関が由来だ▼漫画の虎の穴は、英国のレスリング道場「蛇の穴」がモデルになったとされる。カール・ゴッチさんら名レスラーを輩出した。ゴッチさんは求道的とも言える姿勢で鍛錬を続け、プロレスの神様と呼ばれた。日本のマットにも立ち、技の完成度の高さを余すところなく見せつけた。引退後、アントニオ猪木さんや藤波辰爾さんらを育てた。伝授したジャーマン・スープレックスの鮮やかさにファンは酔いしれた▼技能者の虎の穴とも言える職人育成塾が来月、いわき市に開校する。人材難にあえぐ内装や電気設備、造園の業者4社がスクラムを組み、自前で育てる。工事現場の実物大模型を作り、ベテランが実技を教える。「習得した技を次代につなぎたい」との思いに突き動かされた▼ゴッチさんはさまざまな練習方法を編み出し、若い門下生のやる気を引き出すのがうまかったという。いわきの虎の穴にも、きっとゴッチさんが待っている。「必殺技」を身に付け、それぞれのリングへ。<2024・8・13>