“動かない鳥” ハシビロコウ来園10周年!神戸どうぶつ王国で「ハシビロコウシンポジウム」
アフリカ東部から中央部の湿地やその近くの草原地帯に生息し、“動かない鳥” として知られるハシビロコウ。神戸市中央区の神戸どうぶつ王国では10月27日、神戸大学統合研究拠点コンベンションホールにて、ハシビロコウの来園10周年を記念したイベント「ハシビロコウシンポジウム」を開催した。 【写真】魚が水面に上がるまでじっと待つハシビロコウのボンゴ ペリカン目ハシビロコウ科に分類されるハシビロコウは、クラッタリングやおじぎ行動はコウノトリ、DNA分類ではペリカン、首を縮めて飛ぶ姿はサギに似ている変わった鳥だ。ハシビロコウが動かない理由は、野生下ではエサとなる魚が水面に上がるまでじっと待つ “待ち伏せ型” の狩りを行うためだと言われている。 生息が確認されている国はザンビア、南スーダン、ウガンダ、タンザニア、コンゴ、ルワンダ、中央アフリカ、エチオピア、ケニア、ブルンジの10カ国。野生での生息数は3000~5000羽と少なくなっており、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種(VU)に指定されている。飼育下の繁殖が難しく、動物園での繁殖成功例はアメリカとベルギーのわずか2例のみ。2014年に開園した神戸どうぶつ王国では、同年10月にハシビロコウの展示を開始し、2021年には生息地の環境を再現した「ハシビロコウ生態園 Big bill」を新設するなどアジア初のハシビロコウ繁殖に取り組んでいる。
日橋一昭園長は、1860年発行の英ロンドン動物園のパンフレットを手に「同年3月13日、世界で初めて動物園に2羽のハシビロコウがもたらされた。それから飼育下での繁殖は2008~2009年にパイリタイザ(ベルギー)、2009年にローリーパーク動物園(アメリカ)、その後は2015年にアルワブラ野生生物保護センター(カタール)という非公開の施設だけ」と語り「ハシビロコウの展示と繁殖に挑戦した前園長の佐藤哲也は、残念ながらその夢が叶わず今年3月に亡くなった。今回のシンポジウムによって、困難なハシビロコウの繁殖に一歩でも近づければ素晴らしい」と挨拶。
シンポジウムは神戸どうぶつ王国、高知県立のいち動物公園、千葉市動物公園の飼育スタッフや岐阜大学応用生物科学部の楠田哲士教授、大阪大学大学院人間科学研究科の奈良崎泉氏、ごかつら池どうぶつパークの髙橋文彦園長らによる国内外のハシビロコウの生態や繁殖に関する講演や、恩賜上野動物園およびJAZA生物多様性委員会副委員長の堀秀正氏を迎えたパネルディスカッションで構成。休憩時間には施設内の見学も行われ、全国から300人のファンが来場した。 神戸どうぶつ王国では、10月30日までハシビロコウづくしの期間限定イベント「ハシビロマンスリー」を開催中。