ご来光断念も雷鳥現る 悪天候の立山・山開き、本社記者ルポ 名の由来通りに登場
夏山開きを迎えた北アルプス・立山は1日、未明から激しい風雨が打ち付け、大雨警報も出され、登山客はほとんどいなかった。登頂を諦めて室堂周辺を散策していると、雪の残る雄山(標高3003メートル)の姿があらわになり、登山客も増えた。あいにくの天気で御来光は拝めなかったが、ライチョウと対面することができた。その愛らしい姿に「雨の立山も悪くないなあ」と感じた。(社会部・田中冴香) 【写真】目と鼻の先に現れ、しばらく羽繕いをしていたライチョウ ●雨風に目覚ます 立山は30日朝から天候が荒れ、夜、山荘で寝ていると、「ドンッ」「ミシミシ」と雨風が窓にぶつかる音と振動が伝わり、何度も目が覚めた。御来光を拝むには1日午前2時ごろから登り始めなければならないが、午前1時になっても雨風の勢いが収まることはなく、楽しみにしていた御来光は諦めざる得なかった。 山荘を出た午前9時時点の室堂周辺は気温12・3度、風速5・7メートル。風雨で視界は真っ白だ。立山駅で行われる夏山開きの行事は中止、立山黒部アルペンルート黒部ダム―扇沢間の電気バスは一時運休となった。 室堂ターミナルでは、登頂を断念する人が目立つ。半世紀ぶりに立山を訪れたという福岡県飯塚市の自営業鈴木忠さん(79)「期待していたけど、雲行きが怪しいし帰ります。来月、また来るよ」と高原バス乗り場へ向かった。 室堂周辺では散策路に人だかりができていた。近寄ると、中年夫婦が自分に何か伝えようと声を出さないように口をぱくぱくさせている。ライチョウだ。 ●ライチョウに癒やされ ライチョウは人間を全く気にしていないかのように目の前で羽繕いをしていた。夏の姿に変わる途中のふわふわとした姿に癒やされた。「雷鳥」の名の由来通り、悪天候で外敵がいない時に現れるという話は本当だった。ライチョウの存在を教えてくれた神戸市の会社員柏木裕さん(59)は、「2泊3日の旅でライチョウだけが心残りだったので満足」と笑顔を見せた。 天気が回復するにつれ、散策する人が増え、中には、短パン姿の訪日外国人の姿も見えた。新潟市から4人で訪れた団体職員藤田清美さん(60)は「雄山への登山をやめて、近くを散策することにした。2日は山頂を目指したい」とみくりが池を眺めた。 下山しようとした午後1時ごろ、霧が消え、雄山がくっきりと浮かび上がった。その雄大さにしばし動けず、「今度は御来光を拝もう」とリベンジを誓った。