観葉植物をもっと楽しく。『観葉植物 パーフェクトブック』発売記念 杉山拓巳さんインタビュー
観葉植物の魅力を熟知し、豊富な経験と情熱で植物の世界をより深く楽しむ方法をいつも教えてくれる、観葉植物栽培のトップランナー、杉山拓巳さん。その専門知識と親しみやすい語り口で、YoutubeやInstagramでも幅広いファンに愛され、観葉植物の楽しみ方を広く伝えています。 3月18日に発売された待望の著書『NHK趣味の園芸 観葉植物 パーフェクトブック』を記念して、杉山さんにインタビュー。アップデートが進む観葉植物の世界や、本書への思いについて伺いました。
種類も栽培技術も新たなものに
観葉植物というと、人によって思い浮かべる植物はそれぞれ。というのは、「観葉植物」とは園芸の世界における呼び方で、熱帯・亜熱帯地域が原産のきわめて幅広い種類が含まれているからです。 シダの仲間から、原始的とされるソテツやヤシ、さらに人気の種類ではサンセベリア、パキラ、フィカス、モンステラからアンスリウムやティランジアまで、葉の形や大きさ、雰囲気もばらばら。その多様さこそが観葉植物の魅力で、探すと必ずお気に入りの植物と出会えるはずです。 しかも最近では、それぞれの種類でアップデートが進んでいます。ヨーロッパや東南アジア、そして日本で盛んに品種改良が行われ、美しく、カッコよく、そしてかわいい新品種が次々と登場しています。栽培も昔のままではなく、住まいの環境やライフスタイルの変化に合わせて、伝え方を変える必要が出てきました。
自分だけの1株を育てる
アップデートにこだわるのは、観葉植物の楽しみ方に大きな変化が訪れているからです。2010年代に入るとそれまでのパソコンに加えて、スマホが広く普及。自分の育てた観葉植物を撮影し、画像をSNSで発信する時代になりました。それを象徴するのが、2020年代に入ってからのビカクシダの人気です。観葉植物をインテリアとして飾るだけでなく、手をかけて、自分だけの1株に仕立てていくことに関心が移りつつあります。 観葉植物は生育の早いものが多く、栽培の違いが2週間程度で葉の形や色、株姿などに現れてきます。上手に栽培すると、1年程度でまったく異なるスタイリッシュな姿に変えることも可能です。気に入った1株を入手し、対話しながら、どのように自分好みの株につくっていくか。それこそが観葉植物ならではの栽培の楽しみです。 今回の『NHK趣味の園芸 観葉植物パーフェクトブック』では、園芸品種も含めて約200種類を図鑑で取り上げました。基本的な栽培の考え方やヒントもぎっしりと詰め込みました。 執筆にあたって、今もっている知識と栽培技術をもう一度、アップデートしたくなりました。シンガポール、ベトナム、台湾、アメリカ(フロリダ)の原生地を訪ね、観葉植物がどのような姿で生きているのか、改めて目に焼きつけてきました。 その様子は本書でも紹介していますが、何よりも心を砕いたのは、それを踏まえたうえで、もう一度、観葉植物の魅力をどう伝えるかでした。 本書が観葉植物を楽しむための一助になれば、うれしいかぎりです。 *本インタビューは『趣味の園芸』2024年4月号に収載された記事を再構成したものです。
杉山拓巳(すぎやま・たくみ) 熱帯植物栽培家。1978年、愛知県生まれ。愛知県でビカクシダ、アンスリウム、ブロメリアなど数多くの熱帯植物、観葉植物の生産・育種に取り組む。NHK「趣味の園芸」のほか、「熱帯植物栽培家の気まぐれ塾YouTube版」やInstagram(@bc_sugiyama)のライブなども通じて、これらの植物の情報を発信中。 『趣味の園芸』4月号からは、さまざまな植物を室内で育てるためのテクニックを紹介する、杉山さんの新連載「インドア栽培 A to Z」もスタート。第1回のテーマは、100円ショップで買える観葉植物をいかにうまく育てるか、です。