IHI・日立造船・川崎重工業「改ざんだらけ」、エンジンの検査不正はなぜ起きるのか
3社の問題から学ぶべき3つの教訓
ここからは舶用エンジンの試運転という観点を離れ、読者の皆さんの職場への水平展開を考えましょう。 検査結果のように、記録や転記を誤ると重大な問題になる業務は多くあります。その対策は、デジタル技術が得意とするところです。 人手による転記・手入力を自動化し、人手を介さないようにすることが、業務効率化だけでなく、改ざんや転記ミス防止にも有効であることは言うまでもありません。 次に、写真や動画の利用も効果的です。計測器の表示を写真に残し、検査の準備から実施、記録までの行動を動画に残すとすると、公正な検査の証拠にできると同時に、その一部はその後の職場への新規配属者の教材として、あるいは職場のレアケースの参考記録として生かすことができます。 仮に試運転を動画に記録し、ランダムに10回に1回分の写真・動画が教材や記録として閲覧されるなら、試運転での行動は常に緊張感のあるものになるでしょう。 最後にコンプライアンス意識や企業風土の建て直しです。意識や風土は、経営トップの意向や言動が大きく影響します。仮に、従業員に伝わる経営者の言動が業務効率や利益の話ばかりであれば、コンプライアンスや企業倫理は意識されなくなります。 定期的に、経営者からできるだけ多くの従業員に、コンプライアンスや企業倫理について語る機会を作るのは有意義です。Web会議ツールを利用して、経営トップの言葉を各職場リーダに届けることができれば、職場の意識や風土を建て直すのに大きく役立つに違いありません。 3社が今回の試練を乗り越えて、顧客や社会からの信頼を回復することを祈ります。
執筆:中小企業診断士・公認内部監査人 魚谷 幸一